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続く不祥事

2007/06/18

羅針盤の壊れた社会

 なかなか雨が降らない。降るべきときに降らず、照るべきときに照らない。温暖化なのかどうにもおかしな気象が続く。そのせいでもあるまいが、このごろおかしなことばかり起こる。何をしてはならないか、ということを忘れ、言い訳ばかりしている。社会全体が羅針盤の壊れた船のようである。

  老舗の菓子の会社が賞味期限切れの材料を使ったり、保険会社が保険料をきちんと払わなかったり、ガス湯沸かし器で何人もの死者が出たり。かと思うと、介護業界での信用失墜の不祥事。このところ、三人ならんで薄くなった頭部をみせつけるかのように深々と陳謝する場面が毎日のようにテレビのニュースで流れる。

  それにつけても、と、ふと年金問題に思いが移る。なぜ、このようなことが起こるのかさっぱり理解できない。六千五百万件もの年金データが宙に浮いているという。国はあわてて二十四時間相談電話を設置したが、さっぱりつながらない。運良くつながっても一向にらちが明かない。

  なぜ、これほど重大なことがいままでわからなかったのか。そしていま、なぜ、明るみに出たのか。「歴代大臣も、また社会保険庁の長官経験者でさえも、まったく知らなかったようだ」と自民党大物議員は語る。「明るみに出たのは内部の情報が民主党へ流れたから。社会保険庁つぶしに抵抗するため、混乱をねらった自爆テロだ」と言うのである。

  名簿の照合にあたってきた現場の職員は気づいていたはずだ。当たり前の責任感を持った人々が、社会保険庁に一人もいないなどとは考えられない。なのに、なぜ、このようなことが起こるのか。かつての国鉄(現JR)日本電電公社(現NTT)、そしてNHKなどにも、常識では考えられないような労使癒着の世界があった。

  「国民のため」「顧客第一」などという発想はみじんもなく、「労働環境第一」「労使もたれあい」が価値観の軸になっている。組織として腐りきっているとしか言いようがない。この組織は巨額の資金を「運用」と称して湯水のごとく使ってきた。年金以外に使ったお金は六兆円を超すという。金利でいくらでも財源が増えると考えていたのか、右肩上がりの時代の発想、習慣から抜け出せなかったのだ。

  考えてみれば、ことは社会保険庁の問題だけに限らない。不祥事を隠蔽(ぺい)しようとする企業経営者も、次々と司直の手に落ちる地方自治体のトップも、そして中央の政治家や官僚も、責任逃れにやっきになっている。すっかり情けない姿に堕(お)ちてしまった日本が見えてくる。指導者も、そして現場で働く人々も、当たり前のことを当たり前にしていない。仕事に命をかける職人魂がこの社会から消えてしまったのか。

  「背中を見て育つ」はずの子供たちに自信を持ってみせられるような立派な「背中」をわれわれ大人は持ち合わせていない。動物でさえ子供にするしつけを人間の親ができない。そればかりか、親が子供を、子供が親を殺す。しつけられたことのない子供がそのまま大人になる。子供をしつけられるはずがない。

  経営者として資質を疑いたくなるような人物が、後継者を指名する。己の経営路線を否定するような後継者は選ばない。だから体質は変わらないまま、悪行は隠蔽される。このようにして責任感も倫理観も希薄なリーダーが再生産され続ける。戦後、この国の人々の価値観は「いい学校に入ること」「いい会社に入ること」「豊かな生活を送ること」に集約されていた。

  「世のために一身を投げ打つ」などというのは古くさい倫理観だと見向きもされなくなった。自分だけよければそれでいいというような考え方が、もっとも愚かだと指摘すると、なぜ、と首をかしげる若者たち。「宮内庁」を「ミヤウチチョウ」としか読めない大学生たち。二人に一人が大学へ進学する「高学歴社会」が誕生した日本。社会の知的水準がかつてないほど低いことにどれだけの人が気づいているだろうか。

  一カ月後の参議院選挙を前に、年金問題などの国会の論戦も責任のなすりあいである。「一年で解決する」と安倍首相が確約しても、その通りになると見ている人が驚くほど少ないことは、各種の世論調査が示している。当たり前のことが当たり前に行われず、だれが悪いのかの大合唱である。これほどの「巨悪」はないと思うが、責任の所在もはっきりせず、抵触する法律もないから、犯罪を構成しない。だれも捕まらず、だれも辞めない。

  おなじことはきっとごくごく近い将来、また繰り返されるだろう。選挙の結果どうなっても、問題は何一つ解決しないのだ。

  朝からのいひあらそいや夏の雲 久保田万太郎

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