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はじめに

2007/04/15

目を世界に心を祖国に

田勢康弘
たせ・やすひろ 1944年中国黒竜江省生まれ、山形県出身。日本経済新聞政治部記者、編集委員、コラムニストなどを経て現職。96年度日本記者クラブ賞受賞。著書「政治ジャーナリズムの罪と罰」など多数。テレビでも活躍中。

 縁あってこれからときどき四国新聞読者のお目を汚すことになった。新聞に記事を書き始めてから三十九年、おもに政治を中心に時代を見続けてきた。佐藤栄作首相から安倍晋三首相まで十九人の首相を間近で取材してきた。つたない取材におつきあいいただいた各界の指導者の数は、おそらく万を超すだろう。その大半の方々が黄泉の国へ旅立たれてしまったいま、歴史の証人の一人として、次の世代へ語り継いで行かねばならないことがある。「目を世界に、心を祖国に」の姿勢を貫きながら。

  教壇に立っている早稲田大学の授業で、歌手の山崎ハコさんを招いて音楽会を開いた。ハコさんが民謡歌手伊藤多喜雄さんのために作詞作曲した「愛しき大地」という歌をハコさん、伊藤さんが二人で歌った。その歌詞の中にこんな言葉がある。「ここで生まれた縁がある ここで育った恩がある 愛しき大地 愛しき山よ」

  意外なことにこの言葉に学生たちが強く反応した。若者たちは大人が考えているよりもしっかりしている。そしてこの国の大人たちは、自分たちが考えているよりもはるかに志を失ってしまっているように思う。「愛しき日本」といういささか大時代的な題は、ハコさんの言葉から浮かんだもので、私自身はそれほど保守的な人間でもなく、凡庸な日本人だと思っている。

  日本人の一人として痛恨の極みは、世界の人々が日本を大事な国だと考え、日本人を立派な国民だと以前ほどには思っていないということである。商売の相手としては大事だと思っても、日本人から何かを学ぼうとは思わない、そのように見える。私の恩師でもあり、日本にとって大切な味方である米ハーバード大学のエズラ・ヴォーゲル教授も最近は日本よりも中国や韓国に関心が移っているようだ。

  私たちは常識というものは世界どこでも通じる普遍のものだと思い込んでいる。日本人の常識が世界では非常識に見えることがあるということに気がついていない。顔つきも文化も似ている中国や韓国との間ではとくにそうだ。日本では客人の履物を出口に向けてそろえる。同じことを韓国ですれば、早く帰れという意味で、まことに非礼なことになるという。日本の「手紙」という言葉が中国ではご不浄紙を指す。

  イスラム教の礼拝堂で知人がまわりの信者のしぐさを見て、同じように祈りをささげようとした。屈強な青年が数人来て、すぐに礼拝堂の外へつまみ出された。異教徒の祈りは侮辱だからである。一神教の文化のもとで生きている人々は世界の人口六十億人の三分の二はいるだろう。神社にも寺にも教会にも抵抗なく出かけていく日本人の宗教観は世界になかなか理解されない。無宗教だと説明すれば、よけいに怪しい国だと思われるのだ。

  「美しい国日本」と安倍首相は力説する。自然も文化伝統も、世界に誇れるほど美しい。しかしながら、この美しいはずの日本、いまもほんとうに美しいだろうか。駅前の商店街がさびれ、郊外の通りに大型店や遊技場、簡易家族食堂などがならぶ。自然を壊す役目しか果たさない展望台。国中の景色がおなじようになってしまったいまの日本が、美しいなどと胸を張れるだろうか。(早稲田大学大学院教授、日本経済新聞客員コラムニスト)

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