日本・スイス国交樹立150周年特集

ブーヘル駐日大使インタビュー
遠くても近い国 似ている国民性

 日本とスイスの国交樹立150周年の節目を2014年2月6日に迎えた。欧州のほぼ中央に位置するスイスは、多くの国際機関に、金融や時計などの世界的産業、アルプスに象徴される観光資源があり、国民1人当たりのGDP(国内総生産)が世界上位。日本人にとって憧れの国である上、互いの国民性もよく似ていて、"遠くても近い国"なのだ。節目に合わせ、駐日スイス特命全権大使のウルス・ブーヘル氏に単独インタビューし、知られざるスイスの魅力に迫った。

国際的地位 政治的安定が成功の根底

 国民1人当たりのGDP(国内総生産)は世界4位。人口800万人、国土の広さは九州くらい、しかも自然の資源が非常に少ない。それでもこの地位を保てる理由は、スイスの「開放性」にあると思う。まず5億人に上るEU諸国の人たちが、自国とスイスを自由に行き来できる。科学や起業の点においても非常にオープンな国民性を持っている。そして、政治的に安定していることが、全ての成功の根底にあると考える。
 また、世界保健機関(WHO)や国際サッカー連盟(FIFA)など多くの国際機関が置かれ、先日も世界の政財官界のトップが集まるダボス会議が開かれた。スイスは永世中立国でもある。何より公平かつ中立であることが、世界的な舞台のプラットホームになる鍵だろう。

金融業 UBSなど 金融業に高い信頼

 スイスの経済といえば、まず金融業が挙げられる。UBSやクレディ・スイスをはじめ、100年以上の歴史を持つ会社が多くある。金融業がGDPの10%を占めるとされ、最近5、6年の動向を見ても、世界的にも重要な地位にある。高品質なサービスと高い信頼性が評価されてきたが、政治的にも経済的にも安定していることで、アセットを得ていると考える。

時計業界

 世界3大高級時計メーカーをはじめとする時計産業もよく知られる。スイスの時計業界は2~3世紀にわたる長い歴史を持ち、それが成功の鍵だろう。しかし1970年代に一時、危機的な状況にさらされた。日本の強豪メーカーが現れ、電池式の時計が出てきたのがきっかけだった。しかしスイスはこれを成長の機会と捉えた。「スウォッチ」に代表される安価な時計、またはデザイン性と廉価性を兼ね備えた製品を生み出し、広く浸透させた。一方で高級時計の生産にも力を注ぎ、世界一の価値を持つ製品を提供し続けている。

日本人をリスペクト 世界に誇れる日本人観光客

 スイス人は日本人をリスペクトしている。ホテル業界が行った調査で、最も受け入れたい観光客に挙がったのが日本人だった。日本人を世界に誇れる観光客だと思っている。東日本大震災では、これまでにない多額の寄付が日本に届けられた。「3・11」はほかのどの自然災害よりもスイス人の心に深く刻まれた。規律を持って避難生活を送る東北の被災者の姿がテレビで流れ、深い感銘を受けた。この際に我々が抱いたのは、尊敬以外の何ものでもない感情だった。

和を重んじる

 日本とスイスの国民性はよく似ていると言われる。共に勤勉で、四季の楽しみを知り、自然を愛する。しかし私は、「和を重んじる」という点を最も重視している。家で作るケーキから精密機械の時計まで、作ることに完璧さを求める点も共通しているのではないか。
 国連における投票行動が似ているという指摘もある。スイスは2002年に国連に加盟し、その10年後、国連での行動に関する調査を行った。その結果、95%の事項において日本と同じ投票行動を取ったことが明らかになった。つまり地球規模の問題に関し、両国は同じような考えを持っているということが証明された。またヨーロッパではスイスのみが日本と自由貿易協定(FTA)を結んでいる。

観光 伝統的なチーズ料理は絶品

 アルプスの山々が浮かぶかもしれないが、名所はほかにもたくさんある。例えば私の故郷の「ソロトゥルン」。ここは18世紀にフランスの大使が住んでいたバロック様式の街だ。ごく小さな街だが、文化に関してはとても活気がある。映画祭やブックフェア、ジャズやクラシック音楽のフェスティバルが頻繁に行われ、週末には路上で何かしらの祭りが行われている。ぜひ訪れていただきたい。
 スイスには食の魅力もあふれる。まずは伝統的なチーズを使った料理。ミルクの質が高く、シンプルながらもクオリティーの高い食事が楽しめる。またご存じのように、スイスは多様な文化圏が交差する地理にあり、食文化にもそれが反映されている。フランス、イタリア、ドイツ、オーストリアの食をうまく取り入れて"調理"し、完璧な自国の料理として完成させた。
 世界的なイベントも数え切れないほどある。「モントルー・ジャズ・フェスティバル」は有名だが、クラシックも人気の高いフェスが多くある。これから皆さんに、もっともっといろんな催しを発見してもらいたい。

香川への思い 家族でファンに 近代性と伝統 共存

 2012年の4月に家族と共に香川を訪れた。私たちは日本の至る所でおもてなしを受けるが、この時、香川で受けたおもてなしは、そうした全ての経験を超える、非常に温かい歓迎だった。芸術文化の面でも印象深かった。直島に象徴されるモダンなアートがある一方、伝統的な建築物もある。このように、近代性と伝統が共存していることが記憶に残っており、妻や娘も“ファン”になった。
 今、日本とスイス、香川とスイスの友好関係の新たな1ページが始まろうとしている。国交樹立150周年を契機に、香川とスイスが一層、近くなればいいし、互いに学び合える機会になればいい。スイスの人も香川を訪ねてほしいし、香川の人も、スイスに来るのは難しくても、今回の周年事業にたくさん参加していただき、もっともっとスイスを身近に感じてもらいたい。

スイス時計は「小宇宙」 持つ人に喜びと幸福感

 歴史あるブランド力に加え、高級感あふれるデザインや緻密な内部構造。スイス製時計は時を知るためだけの物ではなく、「芸術作品」「小宇宙」とも評され、憧れや装飾品、ステータスなどさまざまな理由で世界中の人に愛されている。
 ジェトロによると、世界の時計ブランドの売上高ランキングは、ロレックス、カルティエ、オメガの順で、上位をスイスブランドが占める。
 数多くのブランドを扱うアイアイイスズ(高松市)の飯間康行社長は「持つ人に喜びや幸福感を与えてくれる。節目の年にぜひ、スイス製時計の魅力に見て触れて感じてほしい」と語る。

「香川の皆さんにもっともっとスイスを身近に感じてもらいたい」と話すウルス・ブーヘル駐日スイス大使=東京・港区の在日スイス大使館
「香川の皆さんにもっともっとスイスを身近に感じてもらいたい」と話すウルス・ブーヘル駐日スイス大使=東京・港区の在日スイス大使館
【スイス大統領来日】スイス大統領来日 スイスのブルカルテル大統領夫妻と会見される天皇、皇后両陛下=2014年2月3日午後、皇居・御所(代表撮影)
【スイス大統領来日】
スイス大統領来日 スイスのブルカルテル大統領夫妻と会見される天皇、皇后両陛下=2014年2月3日午後、皇居・御所(代表撮影)
【スイス大統領来日】スイスのブルカルテル大統領(左)と握手する安倍首相=2014年2月5日夜、首相官邸
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スイスのブルカルテル大統領(左)と握手する安倍首相=2014年2月5日夜、首相官邸
エンガディン地方のベーヴァ付近を走るレーティッシュ鉄道(swiss-image.ch/MaxGalli)
エンガディン地方のベーヴァ付近を走るレーティッシュ鉄道(swiss-image.ch/MaxGalli)

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