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第3部・脱 子ども虐待〜対策編(20)ケア(中)小人数で「家庭」の愛

トランプを楽しむ子どもたちと浅川。大舎と違い、家庭的な雰囲気にあふれている=愛知県新城市の児童養護施設
トランプを楽しむ子どもたちと浅川。大舎と違い、家庭的な雰囲気にあふれている=愛知県新城市の児童養護施設

 「じゃあ、今晩はカツ丼ね」。子どもたちの「カツ丼コール」に押され、浅川香予(26)は苦笑しながら答えた。「その代わり、ちゃんとお手伝いしなさいよ」。子どもたちは弾けるような笑顔を見せ、「ハーイ」。

 愛知県新城市内の丘陵地に建つ一軒家、「丘の家」。児童養護施設「八楽児童寮」の一施設で、幼稚園から中三までの八人と、親代わりの職員浅川が住み込みで暮らしている。

 この夜は待望のカツ丼をみんなで調理・配膳し、和気あいあいと食べた。少し“母親”が若いこと以外、どこにでもある家庭の風景だった。

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 国内では定員数十人の大舎制が主流だが、八楽児童寮は八人の小舎六つと、敷地と離れて建つ六人のグループホーム二つを展開している。

 「丘の家」は、そんな小舎の一つ。一階は子どもの絵などを張ったダイニングキッチンや浅川の部屋、二階は四畳半―八畳の四部屋にそれぞれ子ども一人から三人までが暮らす。兄弟を念頭に置き、性別や年齢の組み合わせはばらばらだ。

 「おねえさん」と慕われる浅川は、「一般家庭の何気ない日常を大切にしてますね」と力を込める。食事でいえば、定時に献立通り給仕される大舎と違い、子どもたちと一緒に買い物から調理、後片付けまで行う。落ち込んだり宿題に集中している場合は、「後にしようか」と優しく声を掛けることも。

 食事から就寝までを規則や日課で「管理」する大舎の常識は、ここにはない。「従順さではなく、自主性が育ちます」と強調する浅川。体調が悪いとき、食事を準備してくれる子どもたちを誇らしく感じている。

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 小人数なら、一人ひとりの心のケアに時間をかけられるのも大きな特徴だ。

 別の小舎での話。食事前に小四男児が調理中の職員にまとわりつき、わざと邪魔をした。行為は連日繰り返されたが、職員は怒らず、忍耐強く男児に向き合った。その結果、男児は「いつもお母さんに殴られたので夕方が怖かった」と打ち明けた。いつ虐待されるかという恐怖におびえて過ごすよりも、いっそ殴られた方が気が楽になる―。そんな心理が働いていた。

 職員は「絶対たたかないからね。暗くなっても安心してていいよ」。男児は日数を重ねるにつれ、夕方を怖がらなくなったという。施設長の太田一平は訴える。「親との生活で傷つけられた子供たちは、生活の中でしか癒やされないんです」。

 親に大事にされなかったから自分を大事と思えない。甘え方を知らず大人の顔色ばかりうかがう。そんな子供は多い。浅川は「一人ずつしっかりと向き合い、『あなたは大切な人』というメッセージを送り続けます。時間をかければ着実に伝わります」。そう実感している。

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 児童養護施設は全国に約五百五十カ所あり、平均定員は約六十人。定員十二人以下の小舎は六十九カ所と一割強にとどまっており、グループホームはさらに少ない。

 現状を踏まえ、厚生労働省は昨年、▽既存施設の周辺への小規模ホーム付設▽既存施設の内部を仕切る―などによる小規模ケアの推進を打ち出した。ただ、家庭福祉課の担当者は「補助する国、都道府県とも厳しい財政状況から少しずつしか増えない」と明かす。

 県内では「讃岐学園」(高松市)も早ければ来年度、既存施設の改築により小規模ケアに着手する。対象は定員五十八人のうち、わずか六人。事務長の藤田伸一は「補助のあるうちに少しでも取り組みたい。拡大できるかは分からない」とし、今後、虐待を受けた子供を対象に優先順位付けに着手する方針という。

 国が効果を認めながらも、小規模化が進まないという状況。太田はやり切れなさそうにこう嘆く。「選ばれた子どもだけでなく、全員が家庭的環境で育てられる権利があるはずなんですが…」。(敬称略)

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