有明浜の海浜植物(観音寺市)

2001年8月27日

潮風に咲く神秘の花

 心地よい潮風に吹かれて見慣れない花々が季節に合わせて咲き誇る。県内有数の海水浴場として知られる観音寺市の有明浜には、西日本有数の海浜植物の群生地という、もう一つの顔がある。

 市教委によると、その種類はざっと四十種以上。ハマボウフウやハマヒルガオをはじめ、瀬戸内沿岸ではめったに見られないウンラン、ハマウツボなどがある。市は「有明浜の海浜植物群落」として天然記念物に指定し、ホームページ上に二十九種を写真で紹介するコーナーを設置。PRに合わせて環境保護への関心を啓発している。

ハマヒルガオの群生。アサガオに似たラッパ状の花は有明浜に夏の訪れを告げる使者でもある=資料(2000年)
ハマヒルガオの群生。アサガオに似たラッパ状の花は有明浜に夏の訪れを告げる使者でもある=資料(2000年)

 これら海浜植物の存在が知られるようになった背景には、市民有志のグループ「有明浜の海浜植物を観察する会」(吉田一代代表)の熱心な活動がある。一昨年には二十数年間にわたる活動の集大成的な植物図鑑「有明浜の植物たち」を出版した。わかりやすい解説書として好評を得ている。

 その図鑑の巻末、「植物を脅かす環境」と題して、漂着ごみや不法投棄ごみの散乱、生活排水による海水の富栄養化、帰化植物による砂浜の草原化などについて言及。海浜植物に限らず、環境問題へ警鐘を鳴らす意味合いも込められている。

 吉田さんは「海浜植物を切り口に、環境問題について考えてみるきっかけになってくれればと思う」と切に願い、日夜植物たちの観察を続ける。

 貴重な海浜植物の保護を学校教育に生かそうという取り組みも活発だ。

 観音寺東小では、観察する会が提供したハマナデシコの種を児童たちが丹精込めて育て、昨春、浜辺に移植した。豊中町の笠田高では、生産経済科の生物工学専攻生が昨秋、ウンランのクローン技術による増殖に成功した。香川大農学部との共同研究が実を結んだ。

 だが、移植は結局のところ「対症療法」。海浜植物が直面している危機の根本的な解決にはならない。一連の取り組みは子どもたちの心に大切なテーマを植え付けたはずだ。大人たちの役割は決して小さくはない。

増殖させたウンランを浜辺に植える笠田高生と観音寺東小児童=資料(2000年)
増殖させたウンランを浜辺に植える笠田高生と観音寺東小児童=資料(2000年)

 東小児童が植えたハマナデシコは藤色の花を咲かせた。笠田高生のウンランも、順調に育てば秋口には黄白色の花が咲くことだろう。二十一世紀最初の夏、厳しい環境にも負けずに宿った新しい命が有明の浜を彩る。

 風に揺れる海浜植物の群れは、美しさの中にもどこかはかなさを感じさせる。悲しそうにも見える。物言わぬ花たちが訴えていることは、それほど難しいことではないのだろう。耳を澄ませば聞こえてくるはずだ。

文・黒島 一樹(観音寺支局) 写真・鏡原 伸生(写真部)