大麻山の桜並木(善通寺)

2001年4月16日

讃岐人の琴線震わす

 日本人の桜好きは普通じゃない。華やかに咲き、無情に散る様が、心の底深くの何かを揺さぶるのだろうか。毎年、春を迎えた県内の桜の名所には、限られた盛りを逃すまいと、大勢の花見客が姿を現す。

大麻山の桜並木のトンネルをくぐる花見客。今年もゴールデンウイークごろまで楽しめる(資料)
大麻山の桜並木のトンネルをくぐる花見客。今年もゴールデンウイークごろまで楽しめる(資料)

 善通寺市の大麻山(おおさやま)も注目の高い花見スポットのひとつ。ヤエザクラなどを従えた標高六○○メートルにある桜並木は、とりわけ有名だ。高地のせいか見ごろはゴールデンウイークまで続くとあって、最後の桜を惜しむ人が集まる。

 大麻山は山頂の桜並木だけではない。山上に至るハイキングコースにはソメイヨシノ、山腹にはヤマザクラがあり、それぞれ見ごろにずれがある。おかげで一カ月間も花見を楽しめる、ありがたい桜の山だ。

 周辺が古代の麻の大産地だった由来から名前が付いた大麻山。山上の桜並木が誕生したのは一九六五年過ぎにさかのぼる。現在の管理者によると、農業法人がクリ園の整備とともにヤエザクラを管理道路に植栽。クリ園は不調に終わり、桜並木だけが残った。

 現在は約三キロの遊歩道沿いに約八百本の桜が並んでいる。山上からは飯野山、満濃池、瀬戸大橋など、讃岐平野を一望できる。山頂にはテレビ局や通信会社の中継アンテナも数本立っているが、桜と眼下の眺望はあり余る美しさ。季節になると桜のトンネルをくぐり抜ける家族連れやカップルなどでにぎわう。

 魅力的な桜並木を生かそうと、二十五年余り前に市民が動いた。善通寺市内の各種団体が総掛かりで参加した「善通寺市を美しくする運動市民の会」。桜並木へと続くハイキングコースを整備し、道中にはソメイヨシノを植えた。

 「桜を植えたのは七四年の大変な渇水の前後。苦労して二年間で二千五百本植えたけど、根付いたのは三分の一ぐらいかな」。市役所職員で事務局を務めていた大北万里子さん(65)は当時を振り返る。

大麻山に続くチェリーラインを美しく彩るソメイヨシノ(資料)
大麻山に続くチェリーラインを美しく彩るソメイヨシノ(資料)

 山頂へのハイキングコースは「チェリーライン」と名付けた。約八キロの道すがらに千本近い桜が立ち、花見客のほか山菜採りなどが目当ての人を出迎える。市民ハイキングのコースとしてもすっかり定着した。

 「善通寺市民にとって、母なる山のような存在。桜が咲いたよ、紅葉してきたよとか気になってね」と大北さんが表現する大麻山。だが、「最近はちょっと。私もそうなんだけど、足が遠のいてしまって」と疎遠気味。「もう一度、盛り上げてもらいたいわ」。

大麻山の桜並木

 山頂の桜並木は三十年の月日を経て、病気などのため本数が減ったり、樹勢が衰え出した。ソメイヨシノも同様だ。桜並木の管理者は地元の人に喜んでもらえるならと、若木を植えるなどの対策も始めている。

 今年の山頂の桜並木は、二十二日ごろからシーズンが始まり、ゴールデンウイークごろまで楽しめる。

文・福岡 茂樹(報道部)