川めし(内海町)

2002年3月4日

家族で無縁仏慰める

和やかに川めしを楽しむ家族連れ=内海町、別当川河原(資料)
和やかに川めしを楽しむ家族連れ=内海町、別当川河原(資料)

 小豆島には、土庄町の念仏などを唱えて家々を回る「夜念仏(よねんぶつ)」など、古くから地域独特のお盆の行事がある。

 八月十四日の早朝、内海町を流れる別当川の河原で繰り広げられる「川めし」もそんなお盆の行事のひとつだ。家族連れや親類ぐるみで五目飯をたいて、無縁仏の霊を慰めるこの風習は、一九七六年に町無形民俗文化財に指定されている。このご飯を食べると、夏負けしないとも言い伝えられている。

 「餓鬼(がき)めし」とも呼ばれるが、餓鬼とは、生前の罪のために餓鬼道におち、飢えと乾きに苦しむ仏教界の存在。何しろ、地獄の釜のふたも開くといわれるお盆。地獄から解き放たれてさまよう餓鬼へ飲食を施して供養する「施餓鬼(せがき)」が、形を変えつつ風習として根付いていった。

炊き上がったご飯をカキなどの葉に盛りつけ無縁仏の供え物にする(資料)
炊き上がったご飯をカキなどの葉に盛りつけ無縁仏の供え物にする(資料)

 地元の民俗に詳しい古老(70)は「川めしは、自分の知る限りでもかつては町内の三カ所で繰り広げられていた。それが近年は、神懸通りの立江橋付近に限られる習慣に衰退してしまった」という。「盆釜といわれ、今のように家族がそろって五目飯を食べるのでなく、女性だけで行われる仏教行事だった」。

 数年前の八月十四日、眠い目をこすりながら、朝もやが立ちこめる別当川の河原に取材で出掛けた。

 十数軒の家族らが、前日に辺りの石で築いたかまどで、油揚げやシイタケ、ニンジン、ゴボウなどの具をたくさん入れて、五目飯をたいていた。

 日が昇るころになると、かまどの煙が立ちこめ、子供たちがぞろぞろと集まり始め、いつのまにか家族だんらんで、かまどを囲むように車座になっていた。

 出来上がった五目飯を青々とした色のカキの葉十二枚(うるう年は十三枚)に盛りつけ、石の上に並べて合掌したあと、残りのご飯を持ち寄ったおかずとともに会食。どの子供たちも楽しそうにはしを進めていた。わきからご相伴にあずかったが、おこげの香りがしておいしかったのを覚えている。

油揚げや野菜などの具が入った五目飯(資料)
油揚げや野菜などの具が入った五目飯(資料)

 カメラを構えると照れくさそうにしながら「わが家では百年以上続いているらしい。みんなでゆっくりできるのはこんな機会しかないので毎年、心待ちにしている。先祖の供養にもなり、心が和みます」と話してくれた白髪交じりの女性の笑顔が、とても印象的だった。

 時代とともに宗教色を薄めながら、綿々と続く「川めし」。行事のやり方が少しずつ変化していっても、心優しい内海町のお盆の風物詩として、今後も伝えられていくだろう。

文・木下 亨(地方部)