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しょうゆ豆(県内全域) 讃岐の味の代表選手
「塩からーい」「歯ごたえが好き」。給食に登場したしょうゆ豆に児童の反応はさまざま=高松市番町1丁目、四番丁小
「塩からーい」「歯ごたえが好き」。給食に登場したしょうゆ豆に児童の反応はさまざま=高松市番町1丁目、四番丁小
 讃岐の人には当たり前。でも、県外の人はちょっとびっくり。そんな郷土の味の代表選手がしょうゆ豆だ。見た目は煮豆風だが、口に入れると硬い。この歯ごたえが讃岐の人以外には、初めての驚きという。

 作り方はシンプル。干したソラマメを焙烙(ほうろく)という素焼き瓦(かわら)の上でじっくりと炒(い)る。皮がまだらに黒く焦げると、しょうゆ、砂糖、唐辛子などで味付けした調味液の中へ。熱い焙烙を上からかぶせると豆が焙烙の熱で蒸らされ、ほどよい軟らかさになる。

 フライパンでも簡単にできるが、家庭から焙烙やかまどが姿を消す中で、自家製のしょうゆ豆から市販のものを口にすることが多くなった。

 メーカー最大手の大西食品(丸亀市)では、一九六〇年代からしょうゆ豆中心にシフト。真空パックの機械を導入して商品の日持ちがよくなったのが転向の理由で、県内のほとんどのスーパーに卸しているという。

 同社の大西圭太郎会長(73)によると、商品で最も気を使うのが豆の硬さ。「原料の豆は年に一度しか採れない。気温、湿度、豆の水分含有量などが変わる中で、一年を通じて同じ硬さにするのが難しい」という。

何にでも合う素朴な味わいが、讃岐の食卓に欠かせない
何にでも合う素朴な味わいが、讃岐の食卓に欠かせない
 豆の硬さは時代に合わせて徐々に軟らかくしている。「『硬いしょうゆ豆がほしい』というお客さんの声も耳にしたが、どうしても売れ行きに影響する」と同会長。「煮豆にしたらいかんので、見極めが大事。かんだ時のポロッと砕ける感じがないとしょうゆ豆とはいえない」と伝統の味の継承に意気込む。

 「讃岐でしょうゆ豆が作られた背景には、小豆島などでおいしいしょうゆが造られたことも関係あるのでは」。川染節江明善短大学長(調理科学)は、しょうゆ豆の起源をこう解く。

 川染学長によると、保存食として利用されたしょうゆ豆といちばん相性がいいのはなんと言ってもうどん。「ぴりっと辛いしょうゆ豆はうどんの箸(はし)休めに最適。ご飯にもお酒にも合う」と万能ぶりをたたえる。

焙烙の上でじっくり炒るのが秘けつ(1980年ごろ・資料)
焙烙の上でじっくり炒るのが秘けつ(1980年ごろ・資料)
 讃岐独特のしょうゆ豆文化の背景には、香川が全国有数のソラマメの産地であることも見逃せない。県農業生産流通課によると、ソラマメはいわゆる新豆と呼ばれて塩ゆでなどに使う未成熟ソラマメと爪の部分が黒くなるまで熟れた成熟ソラマメの二種類に分類される。干してしょうゆ豆に使うのは後者だ。

 成熟ソラマメは農水省の統計資料にない特殊な品目。日本豆類基金協会発行の「雑豆に関する資料」に県別の作付面積だけが掲載されている。九七年産の調査だが、香川は百二十二ヘクタールでダントツの一位。以下、大阪四ヘクタール、兵庫一ヘクタールで四位以下はなし。香川がいかにしょうゆ豆に特化した産地であるかが分かる。

 一月末、高松市番町一丁目の四番丁小(溝渕正臣校長)では給食に郷土料理が登場。あんもち雑煮、マンバのけんちゃんなどともにしょうゆ豆も出された。

 讃岐っ子にとってはおなじみのメニューで、「おいしい」「家でもよく食べる」と、好評だった。昔の硬い豆とは違うけれど、讃岐人はみんなしょうゆ豆が大好き。子どもたちの笑顔がそう物語っていた。


文・靱 哲郎(報道部)  写真・鏡原 伸生(写真部)

    
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