播磨灘に昇る朝日(津田町)

2001年9月3日

息のむ大自然の摂理

 美しい朝日が見られるスポットはどこか?

 夕日は西讃の燧灘周辺が有名だが、朝日となるとほとんど耳にしない。朝日は早起きしなければ見られないから、一年に一度の初日の出は例外として、もうひとつ盛り上がらないのだろうか。

 東から昇る朝日の姿を近くで眺めようと、国道11号で高松から徳島へ。羽立峠を越えて津田側から県道志度小田津田線に入り、うねうねした山道を十分ほど車を走らせると、廃校となった北山小学校の校舎が目に入る。少し進むと鷹島と猿子島が沖合に浮かぶ。

播磨灘の水平線の彼方から顔を出す朝日。「神々しい」という表現もしっくりくる=津田町津田
播磨灘の水平線の彼方から顔を出す朝日。「神々しい」という表現もしっくりくる=津田町津田

 ここは、そう、朝日の美しいスポット。

 津田町北端の北山から猪塚にかけては、小高い山となった地域で目線の先には播磨灘が広がる。「朝日がきれいだからと遠くに出掛ける人がいるけど、ここで見たらいいのに」と地元の女性。

 夜とも朝ともつかぬ不思議な時間帯、澄んだ空気を胸いっぱいに取り込み、眼下を見渡していると、遠くには淡路島が浮かぶ播磨灘の水平線から、闇(やみ)を破り、まばゆい光の塊が姿を現してくる。

 写真家の安川満俊さん(67)=津田町=は「県内でいろいろな朝日を撮影した経験では、小豆島も美しいけれど、北山から見る朝日が最もきれい」と教えてくれた。格好のロケーションとあって、他のカメラマンもちょくちょく姿をみせる。

播磨灘のまばゆい朝日を浴びてのサワラ漁。1969年6月ごろの光景だ(資料)
播磨灘のまばゆい朝日を浴びてのサワラ漁。1969年6月ごろの光景だ(資料)

 津田湾の別名は蟹甲湾(かにこうわん)と呼ばれる。湾を囲む地形がカニの甲羅のように見えるからだ。北山は西のツメに当たる。蟹甲湾は入り江になっているため、同じ津田でも場所によって朝日の見え方が異なる。自称、『街の子』の五十歳代男性は「朝日が美しいなんて、言われるまで気付かなかった」。

 高松市内で鮮魚販売店を経営する大江雅敏さん(69)は一年中、毎朝早くから津田以東の漁港を巡ってきた。「朝の五時前に北山の方に行く機会があると、ちょうど播磨灘に朝日が見られる。どこよりも美しい」。

 季節によっても朝日は見え方を変える。夏場はまさに水平線から、冬場は津田の松原寄りから顔を出す。大江さんは「一番きれいなのは夏。七月から八月ぐらいが一番」と太鼓判を押す。

地図

 半世紀にわたり北山の江泊漁港で漁を続けている大坪時男さん(69)は、ちょっと見方が異なる。「夏の暑いときに朝日が昇るのを見たら、また暑そうな太陽が出てきよると思ってしまう」。

 町役場の奥谷隆司商工観光課長は「確かに北山からの朝日はきれい。だけど、言い伝えを聞いたことはないし、観光にも活用していない」と少々恐縮気味に語る。

 せっかくの美しい朝日も、ひとにぎりの人たちの宝物なのも現実。

 朝日は努力をしなくても、地球が滅亡するまで残るだろうが、それまでにもっと大勢で美しさを共有したいものだ。

文・福岡 茂樹(報道部) 写真・鏡原 伸生(写真部)