21世紀へ残したい香川 読者から公募した「残したい香川」の110選を順次紹介。
HOME > 連載 > 21世紀へ残したい香川 > 丸亀うちわ(丸亀市)
丸亀うちわ(丸亀市) 後継育成へ研修制度
職人のわきでうちわづくりの修業に励む研修生(右)=丸亀市港町、うちわの港ミュージアム
職人のわきでうちわづくりの修業に励む研修生(右)=丸亀市港町、うちわの港ミュージアム

 「丸亀がうちわの産地であることは、昔から知っています。やっぱり竹うちわは風情があっていいですね」。丸亀市港町の「うちわの港ミュージアム」を訪れた神奈川県の主婦グループは声をそろえた。

 ここの売店では、竹うちわとポリうちわの両方を販売しているが、観光客は必ずといっていいほど、値段の高い竹うちわを買い求めるという。自然の素材を使い日本的なムードを漂わす小道具への関心は今も根強い。

 丸亀うちわといえば、竹うちわというイメージが強い。しかし、昭和四十二年から生産が始まったポリうちわの急速な普及で、現在の竹うちわの出荷量は、ピーク時昭和三十二年の一億二千万本には遠く及ばない八十万本前後に落ち込んでしまった。

 県うちわ協同組合連合会(矢野俊郎会長)によると、竹うちわが主役の座を奪われた理由は、ポリうちわが機械化などによって安価に生産できることから、イベントや企業の販売促進用として需要が高まったからだという。さらに近年、労働力の安い中国からの竹うちわの半製品が大量に輸入されるようになったのも追い打ちをかけた。

張りの作業に追われる職人=丸亀市塩屋町
張りの作業に追われる職人=丸亀市塩屋町

 昔ながらの技法では、一本のうちわが出来上がるまでに、四十七に上る工程がある。作業は、大きく分けて、骨と張りの二つ。骨づくりは男性の仕事で、素材の竹を四〇―五〇センチに切って一定の幅に割る木取り、切り込み機で穂先より約十センチのところまで切り込みを入れる割(わき)といわれる過程などがある。

 張る作業は女性の仕事とされ、うちわの骨の穂の部分に紙を張り付ける貼立(はりたて)、うちわの周りにへり紙と呼ばれる細長い紙を張る「へり取り」など。それぞれの過程が根気のいる単純作業で、しかも熟練を要する仕事だけに、若者には敬遠され、今では昔ながらの「うちわ屋さん」は六軒のみになってしまった。

 危機感を募らせた連合会は、丸亀うちわが国の伝統工芸品に指定されたのを機会に、平成十年度から古くからの技法の保存や後継者の育成を目的に、技術研修生の募集を始めた。

 県伝統工芸士の七人が交代で八日間にわたってミュージアムで指導する。年齢は五十、六十歳代が中心で、「定年後の趣味」「脱サラ」など研修の理由はさまざま。二年間で二十六人が受講、骨づくりから張りまですべての作業をかけ足で勉強している。

 「手仕事に興味があり、定年を機に挑戦した。夢はあるが、まだまだ満足なうちわは作れない」とは吉野香さん(61)。研修後もミュージアムで工芸士のわきに座って修業に励んでいる。

 「予想以上に研修生が訪れた。うちわづくりは分業だけに、職人はいても骨と張りの両方ができる作家はいない。研修生には新たな丸亀うちわの道を開発してほしい」。同連合会副会長の加門実さん(73)は、こう期待する。

 丸亀うちわは現在も、年間八千五百万本前後を生産し、全国で九割のシェアを誇っている。同市塩屋町は、その中心地。五月下旬になり、職人さんの作業も本格化してきた。“うちわの町”は今も健在だ。

文・木下 亨(報道部) 写真・久保 秀樹(写真部)

<<一覧へ ▲画面上部へ
Copyright (C) 1999-2002 THE SHIKOKU SHIMBUN. All Rights Reserved.
サイト内に掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています
四国新聞ニュースサイトへ