21世紀へ残したい香川 読者から公募した「残したい香川」の110選を順次紹介。
HOME > 連載 > 21世紀へ残したい香川 > お成り街道(高松市仏生山町)
お成り街道(高松市仏生山町) 消えゆく町家の面影
地図
 瓦(かわら)ぶきの大屋根に白壁、細い桟(さん)を組んだ連子窓(れんじまど)や殿様を見下ろさないように低く作られた中二階の虫籠窓(むしこまど)…。高松市南部の仏生山町には、江戸情緒が漂う貴重な町並みが残っている。

 仏生山は一六六八(寛文八)年に初代高松藩主が菩提寺(ぼだいじ)として法然寺を建てたことから、門前町として繁栄した。琴電仏生山駅前の市道と県道が交わる交差点から、※(ちきり)神社までの約一キロの街道は、歴代藩主が墓参りに訪れたため、「お成り街道」とか「殿様街道」とも呼ばれた。街道沿いの約百三十軒の住居や商店の中には、現在も江戸から明治ごろに建てられた古い民家が点在しており、魅力あふれる景観を形成している。

中2階の虫籠窓が江戸時代の名残をとどめる町家=高松市仏生山町
中2階の虫籠窓が江戸時代の名残をとどめる町家=高松市仏生山町
 その街道の面影が、近年急速に失われつつある。終戦直後には約百軒、二十年ほど前でも三十軒ほどが残っていたかつての町家は、老朽化に加え、生活様式の変化、居住者の高齢化や商店街としての機能の低下などを背景に、取り壊しや建て替えが進んでいる。

 現存する町家は約十五軒。ここ三年の間に三軒が駐車場やマンションに姿を変えた。昨年夏には、※神社の石段前にあった江戸中期の建物といわれる最古の町家が撤去されるなど、開発のペースが鈍る気配はない。


 地元がこうした動きを手をこまねいて見ているわけではない。仏生山歴史街道推進協議会会長の喜多忠さん(70)は「一キロも町家が続く門前町は県内では残っていない。早急に景観を守る必要がある」と、保存を呼び掛けている。

街道を南端から北を望む。同じ位置から撮影した昭和初期の写真(上、岡田邦夫さん提供)と比べ、現存する町家は少ない=高松市仏生山町
街道を南端から北を望む。同じ位置から撮影した昭和初期の写真(上、岡田邦夫さん提供)と比べ、現存する町家は少ない=高松市仏生山町

 同協議会は、沿道自治会の代表者やPTA、商工会など地元関係者が集まり、八年三月に発足。景観保全の先進都市の視察、調査などを経て、景観まちづくりの概要案をまとめた。協議会は、高松市の都市景観形成地区の指定を目指し、「今年中に景観保全のルールをまとめたい」としている。

 協議会の活動費の一部を助成している高松市も、「景観保全は地元の合意形成が第一条件」としており、一日も早いルール作りを求めている。しかし、すべての住民を納得させることのできる共通ルールを設けることは、極めて難しい。

 喜多さんは「町家の建て替えは仕方のない面もある。しかし、ブロック塀(べい)や壁の色だけでも、統一性を持たせることができれば、五十年、百年先には再び仏生山らしい景観の町並みをつくれるのでは」と話す。町家を守るだけでなく、古い民家を核に地元住民が新たな景観形成に取り組む遠大な計画だが、“私権”の壁は厚く、前途は険しい。

文・靱 哲郎(報道部)   写真・久保 秀樹(写真部)

【編注】※は月へんに券の中が木

<<一覧へ ▲画面上部へ
Copyright (C) 1999-2002 THE SHIKOKU SHIMBUN. All Rights Reserved.
サイト内に掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています
四国新聞ニュースサイトへ