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赤レンガの自衛隊建物(善通寺市南町) 明治の遺産、今も現役
明治の息遣いを伝える赤レンガ。堅牢な構造で今も現役だ=善通寺市南町
明治の息遣いを伝える赤レンガ。堅牢な構造で今も現役だ=善通寺市南町

 町のあちこちに歴史的建造物が残る善通寺市。とりわけ県道善通寺大野原線と総本山善通寺を結ぶ大門通りでは、明治時代後期から大正時代に建てられた赤レンガの自衛隊建物が、ひときわ目を引く。

 三棟の赤レンガ建物は旧陸軍第十一師団兵器庫として、一九〇九(明治四十二)年、一一(同四十四)年、二一(大正十)年に相次いで完成。二階建てのレンガ造りでドイツ人技師の設計といわれる。

 建物に近づいて驚かされるのが、大きさと堅牢(けんろう)な造り。明治期の二棟は幅十四メートル、奥行き六十三メートル。大正期の方は奥行きが九十メートルもある。

赤レンガの建物・地図

 重量物を納められるように床には分厚い石板が敷き詰められ、柱や梁(はり)、階段なども木材をふんだんに使ってある。また、百カ所を超える縦長の窓には花こう岩のひさしと鉄製の扉を取り付けてあり、旧陸軍の威厳すら感じさせる。

 三棟は陸上自衛隊の施設として、現在もすべて現役。容易に中に入って見ることはできないが、特徴のある外観が市民からは「自衛隊の赤レンガ」として親しまれている。

 市民に愛される歴史的景観を生かそうと、善通寺市は九五年度から「くらしのみちづくり事業」に着手。赤レンガ前の大門通りも、歩道の拡幅、自衛隊施設を意識したレンガ舗装、レトロ調の街頭整備など、大幅に手が加えられた。

 同市は昨年春、市民から大門通りの愛称を募集して「ゆうゆうロード(遊・友・YOU)」と命名。「自衛隊正門付近にせせらぎを配してあり、友だちと悠々と遊んでほしいというイメージを込めた」としている。

 同市では昨年、旧善通寺偕行社(かいこうしゃ)が県内から十八年ぶりの重要文化財に指定されるなど、旧陸軍にまつわる施設の文化財登録が相次いだ。

建設中の兵器庫。レンガ積みを終え、屋根にかかるところ(1910年ごろ・善通寺自衛隊蔵)
建設中の兵器庫。レンガ積みを終え、屋根にかかるところ(1910年ごろ・善通寺自衛隊蔵)

 同市は市立郷土館として利用している偕行社を、本来の社交場に再整備する構想を検討しており、旧陸軍施設の保存・活用に前向きだ。赤レンガの建物や第二混成団本部(旧師団司令部)など防衛庁が所管する施設についても「文化財としての価値は非常に高い。市としては、長く保存したい」という。

 陸上自衛隊善通寺駐屯地の新浜定夫広報室長は、「市から文化財として保存してほしいという要請は受けている。基本的に残したいとは思っているが、現在はあくまでも防衛庁の施設」と説明。市の要請を上部組織に伝えているが、結論は出ていないという。

 防衛優先か、文化財か。結論を出すのは容易でない。しかし、いずれにしても建物の価値が変わるわけではない。

 街並みにとけ込んだ今の姿は、市民から愛され、自衛隊が補修を重ねながら大切に維持してきた成果。百年近く善通寺を見守り続けた赤レンガの建物は、二十一世紀のまちづくりにも欠かせない。

文、写真・靱 哲郎(報道部)

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