虎頭の舞(白鳥町)

2001年10月1日

伝統芸、秋祭りに奉納

 稲刈りもピークを過ぎ、優しいそよ風が吹き始めると、今年も東讃の町・白鳥に秋祭りの季節がやって来る。

 同町の氏神さま・白鳥神社に奉納される虎頭の舞は獅子(しし)舞の一種。三百年の歴史を誇る勇壮で豪快な舞で、一九六九年に県の無形文化財に指定されている。普通、獅子舞に登場するのはライオンだが、虎をモチーフにしている点が県内でも珍しい。

和唐内が虎を退治する勇壮な舞=白鳥町(資料)
和唐内が虎を退治する勇壮な舞=白鳥町(資料)

 町史などによると、虎頭の舞は、白鳥神社が江戸時代初期の十七世紀中ごろに復興された折、京都から伝えられたとされている。

 当初は、ただ、虎の頭を振り回す程度だったが、元禄年間に入って、近松門左衛門による歌舞伎「国性爺合戦(こくせんやかつせん)」が流行するにつれて、そのストーリーを取り入れ、より動きのあるスタイルに変化していったという。

 「地域の古老らの記憶によると一九二〇年代前半からは現在の形の舞になった」と虎頭の舞保存会役員の高嶋俊治さん(46)は説明する。

 同舞の物語は、和唐内(わとうない)と呼ばれる武士と虎との出合いから、最後に和唐内が悪者の虎を退治するまでの格闘を描いている。随所に見られる和唐内と虎とのにらみ合うシーンが、一層舞に迫力を加えている。和唐内の立ち居振る舞いに目を向けると、六方を踏むなど歌舞伎を素材にしているのがよく分かる。

 出演は、派手な黄色としま模様の油単付きの虎頭を扱う虎使いに若衆が三人(虎に入るのは二人で途中交代する)。きらびやかな化粧まわしを巻き、くま取りをした和唐内は九歳の男児、笛吹きは小学四年生五人、虎が好む笹(ささ)やぶをイメージする笹振りに三歳児五人が登場する。

 このほか鉦叩(かねたたき)、拍子木など総勢二十人余りに上る。これらはすべて、同保存会を支える白鳥二支部自治会のメンバーだ。

自治会内を巡って特訓の成果を披露する=白鳥町二支部自治会内
自治会内を巡って特訓の成果を披露する=白鳥町二支部自治会内

 祭りの本番は、毎年十月六、七、八の三日間。虎頭の舞は神社境内で奉納されるほか、百五十軒余りの同自治会の家へもおもむき、勇壮な姿を披露し、地域の連帯感を深めている。

きらびやかな衣装をまとった和唐内が見事に見えを切る=白鳥町
きらびやかな衣装をまとった和唐内が見事に見えを切る=白鳥町

 現在、祭りも近づき、夜になると出演者が地区の公民館などに集まり、猛特訓を繰り返している。一挙手一投足をめぐって、深夜まで議論を重ねることもあるという。

 今年で虎使い役が七年目の黒田伊織さん(29)。「笹振りなど子役でも出演していただけに、虎の役は子どものころからあこがれていた」と笑顔を見せる。「舞は虎を生きたように見せるために、動きにメリハリを付け、より動きを大きくするように努めている」。

 地域の伝統芸能に二十年以上も携わっている高嶋さんは「昔ながらのスタイルを大切にしている点が魅力になっている。後継者難から消滅の危機もあったが、今後も誇りを持って先人から受け継いだ伝統を守っていく」と自信を示した。

文・木下 亨(地方部)