金刀比羅宮美の世界 題字・米今正一
 HOME > 連載 > 金刀比羅宮 美の世界 > 記事詳細
SHIKOKUNEWSへ

第62話 大型船のプロペラ

世界最大級の実物奉納
今治造船社長・檜垣俊幸
今治造船社長・檜垣俊幸

 ◆ひがき・としゆき 1928年愛媛県今治市生まれ。43年今治造船入社。同社常務、専務、副社長を経て、92年社長に就任。99年から四国経済連合会常任理事、2001年から今治商工会議所会頭、03年からは社団法人日本造船工業会副会長(再任)など、多くの要職も務めている。02年勲二等瑞宝章。96年から金刀比羅宮責任役員。

大型船のプロペラ。真鍮(しんちゅう)製で直径6メートル、重さは19・2トンもある
大型船のプロペラ。真鍮(しんちゅう)製で直径6メートル、重さは19・2トンもある
 こんぴらさんも当社もうまく回っていきますように…。そんな願いから、平成六(一九九四)年九月に大型船のプロペラ(スクリュー)を奉納しました。実際、こんぴらさんの奉納物の中で、最大級ではないでしょうか。何しろ、直径六メートル、重さは一九・二トンあり、五翼のものとしては当時、世界で最大級の本物のプロペラです。桜の馬場を上りきった左手に、お宮の方で設置場所を確保していただきました。奉納して十年がたち、すっかり周囲の風景にも溶け込んできたと感じています。

 造船業に携わる者として、安全管理には最も神経を使います。出来上がった船の航海安全を願う気持ちも同じです。しかし、いくら安全管理を徹底しても、しょせんは人間のやることですから、何が起こるか分からない。神のみぞ知る。最後はやはり、神頼みです。「人事を尽くして天命を待つ」といった心境でしょうか。やれるだけのことはやって、後は「海の神様」に拝むわけです。

 何もしないで事故があったりすれば、悔やんでも悔やみきれません。しかし、でき得る限りの対策を講じておけば、万が一、事故が起きても納得することができる。神に拝むという行為は、そうした「精神のよりどころ」を求めてのことでしょう。私が子どもの時分は神仏にお参りする、といったことが日常生活の中にごく普通にあり、自然と信仰心が芽生えていったものです。

1994年9月に奉納された(今治造船提供)
1994年9月に奉納された(今治造船提供)
今治造船丸亀事業本部
今治造船丸亀事業本部

 今治生まれの私が、初めてこんぴらさんへ参拝したのは戦前のこと。ちょうど桜の季節です。その後、造船業に携わり、何度も当地へ足を運ぶようになるとは、不思議なご縁です。初めて機帆船の設計をした二十代に船の安全を祈願して参拝したのが、「海の神様」を意識してお参りした最初でしょうか。当時は各駅停車の列車しかなく、片道六時間。参拝は一日仕事でした。

 参拝の際、あの長い石段を一生懸命歩いたものです。毎日歩くと運動になって、少々の病気なら吹っ飛んでいくのでは、と思ったほどです。ご神木も歴史の重みを感じさせてくれ、よくぞここまで保存できていたと感心させられます。海までが見渡せる眺望もすがすがしく、時には高いところへ登ってみるのもいいものだと最後に思わせてくれます。そんな仕掛けが至るところにあるのが、こんぴらさんの魅力でしょう。

 神社や歴史のある組織は伝統やしきたりを重んじるあまり、悪く言えば、旧態依然になりがちです。しかし、時代は確実に変化しています。企業経営の立場から言えば、そうした時代に迅速に対応するために、組織のトップには「改善と改革」、新しい感覚が求められます。六月に完成した新しい社務所や新参集殿「緑黛殿」などの大きな事業を見ると、新しい時代、まさに「ニューこんぴらさん」を感じることができるのではないでしょうか。守るべきところは守っていただき、「常に時代の先端をゆく、こんぴらさん」であってほしいと願っています。(談)

(2004年6月20日掲載)


  一覧へ