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瀬戸内物語 北川フラム

(81)初心に帰る 過疎の生活文化を大切に

2017/11/01

中国松陽県の※坑村の風景(松陽県「松陽旅游」提供)※は横の旧字体

中国松陽県の※坑村の風景(松陽県「松陽旅游」提供)
※は横の旧字体

15日から中国・上海で行われているアートフェスティバル「Shanghai Urban Space Art Season 2017」。瀬戸内国際芸術祭のブースは大勢の人でにぎわっている

15日から中国・上海で行われているアートフェスティバル「Shanghai Urban Space Art Season 2017」。瀬戸内国際芸術祭のブースは大勢の人でにぎわっている

 瀬戸内国際芸術祭の4回目に向かって準備が始まりました。美術がもつ地域の特色を発見する力、それを守り伝えていくために、場所と人、人と人を媒介する力が地域に誇りをもたらし、来られる人たちの元気につながってきましたが、世界最大規模の芸術祭が質を維持していくために、今ひとたび初心に帰り、現在の課題を冷徹に見ようと心しているところです。  この間、瀬戸芸を考えるにあたって学ぶべき三つのことがありました。一つは奥能登珠洲での奥能登国際芸術祭が10月22日に終わったことです。

 かつては日本海に突き出た半島として北前船の寄港地であったなど、殷賑(いんしん)を極めた場所が、東京からの物理的・精神的な距離により3万8千人あった人口が1万4千人になった地域です。ここでは里山里海という地形・天候による特質、よそから集まる文物が漂着神として敬われてきた厚い文化、岬めぐりの魅力、12年前に廃線になった能登線などに焦点をあてたコンパクトさが評判になりました。

 地域総出の対応もさることながら、特筆すべきは市民のほとんどがパスポートを買って全作品を見て回ったことでした。意外に人々は地域を知りません。灯台もと暗しです。これによって誇りと協働が生まれ、地域が変わり始めました。心すべきことでした。

 二つ目は、中国は浙江省の松陽県の視察でした。ここでは人口がほとんどいなくなった地域に建築家や研究者が入り、自費も出して特色のある図書館や民宿をつくり、その霧の上の天界の村の絶景を見に多くの人が来ていました。また、伝統の生業である茶園や黒糖の記念館で古くからの伝統芸能が堪能できるのです。

 瀬戸芸や越後妻有の大地の芸術祭から学んだということで、かねてから誘われていたのですが、上海フェスティバルで瀬戸芸のブースができ、私が基調講演をするこのチャンスにと訪問してきたのです。この「過疎の地の生活文化を大切にする」という初心こそ、大切なことだと思います。

 三つ目は文芸評論家の加藤典洋さんとの対談です。これは東京・代官山のヒルサイドテラスで今年始まった「知をひらく人たち」というシリーズで私がゲストを迎えて対談するというものですが、今まで丹下健三さんについて槙文彦さん、大岡信さんについて池澤夏樹さん、柴田南雄さんについては高橋悠治さんでやってきました。今後も湯川秀樹さん、岡本太郎さん、柳田国男さんを取り上げるつもりですが、今回、鶴見俊輔さんをめぐり加藤さんで、となりました。

 鶴見さんは、戦後すぐの1946年に雑誌「思想の科学」を創刊し、50年にわたりその編集人をつとめ、市民の目線からジャンル横断の特集を企画して日本の思想界に「雑誌」という媒体ならではの影響を与え、「戦後」という得体の知れない時代を土俵として、切実な論考を発表し続けた敬愛する方です。加藤さんはその「思想の科学」の後期10年間の編集にも携わり、鶴見さんに親しかった方で、鶴見さんをよく知っておられます。

 小田実や埴谷雄高、多田道太郎など日本思想界の稜線をかたちづくる人たちや、市民の多くの動きにつきあいながら、「転向」研究、ベ平連などの活動の根底を支え続け、人間の良心・初心・祭りの中心にぶれずに居続けた凄さがどこから来るのか? 私はそれを知りたかったのです。

 加藤さんは、「いわば狂気ともいえるものを薄めて薬にするという態度は、鶴見さんの厳しい苦しさのなかから生まれてきたものではないか」と述べられ、戦後の美術界に多くの影響を与えた「限界芸術論」が、純粋芸術、大衆芸術、限界芸術と三つに分類されているように見えるが、純粋芸術・大衆芸術の紙背にあるのが限界芸術だと読んだ方がよいのでは、という示唆を与えてくれました。これも私にとっては瀬戸芸を考える時の大切な指針であると思った次第です。

(アートディレクター)

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