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瀬戸内物語 北川フラム

(72)空海さんと「同行二人」 未来は絶望的ではない

2017/01/28

 新年のめでたさから始める習いで言うと、大相撲の稀勢の里の初優勝からかな。さすがに10年近くのファンともなると、14日目の取り組み前には、きょうで転んでしまい、千秋楽の同星本割でも負けてしまうだろうから、きょうもし勝っても、白鵬が負けてくれない限り、また同じ結果になってしまうだろうと、諦めていました。でも信じていたと言った方がより近い。

 ところが白鵬がこけてくれて、その上、千秋楽に負けても横綱は張らせてあげるという世論もあって、いつもなら2連敗だが、いつものようには終わらなかった。

 この気持ちは僕だけではなく、かなり多くの相撲ファンも同じだったと知って安心し、心強く、これはほとんど信心、信仰に近いなあと思いながらも、そして危ないと自省するのです。ハードルを下げてでも何でもいいというムードは、何か今どきの政治的ナショナリズム、劇場的手法に似てはいないかとも思ったことです。

 なぜ稀勢の里ファンの話になったかと言えば、私はこの正月中、風邪気味で、毎日の移動はいつもながらとは言え、それでも自重して、家にいて弘法大師の本を読んだり、弘法さんのことを考えることが多かったからです。稀勢の里は不動明王に似ているし、いよいよ「瀬戸内全誌」の構想、編集企画の作業が始まる、という必要に迫られてきたからもあるのです。

 瀬戸内全誌は、香川県を起点としながらも一衣帯水(いちいたいすい)とも言うべき瀬戸内海、瀬戸内沿岸地域を地殻上、地形上、気象上、さらに地政学上の層のレイヤーから捉え直し、それを日本列島を含む、ユーラシア大陸(極東)の島文化の所在を明らかにすることによって、今の私たち地球全体の環境的、政治的、社会システム上の指針の航路図を描けないかという思いから考えられたものです。

 そしてそれは、おそらく、集落という単位の研究からつむぎ出されることが多いのではないか、と予感されるものです。そしてさらにこの極東の群島の文化は、どこかで世界各地域の文明と同時代性をもっていると確信するからです。

 それらのうえで、というか、それらのベースになるべきなのが、人々の、普通の生活をしたい、先祖以来、自分を含めて生きてきたことをことほぎたい、未来が絶望的ではないと信じたいという願望なのだと思います。ここに諍(いさか)いはいやだ、終わりのない競争はいやだ、戦争だけはやりたくないということも入るかもしれません。これを含めて経世済民と言ってよいかもしれません。私たちは簡単に言ってしまえば、民俗学者宮本常一さんの仕事に導かれ、大島の入所者の人々の気持ちに照り返されて、芸術祭の指針にしてきました。そしてそれは空海さんのやろうとしたことを導きの糸にしてきたと言ってもよい。瀬戸内全誌も、瀬戸芸も同行二人、この矛盾と限界と断層のなかにある一回きりの生をいつくしみあう、おもてなしの心を、心のあり方として考えていきたいと思っているからです。

 そこで、弘法さんの護摩、あるいは不動明王を自己同一すべき対象であり、自分自身として修法し、祈るという私たち一切衆生の思いについて考えてしまうのです。それが相撲のファン心理に似ているなあというのが、年頭のお題でした。仏の教えを得るため、曼荼羅(まんだら)のなかにもともとあった地域信仰であるバラモンの神をもってくる、そのどれを選んでもいいという態度はまた、空海が高野山を開くにあたってその土地の神官たちに祈ってもらったり、平城京では古くからの奈良仏教とも仲良くやったという態度につながるような気がするのです。

 新年のささやかな望みとしては満濃池にかつてあったという護摩壇の跡地を訪ね、弘法さんの足跡を追ってみたいと思うのです。

(アートディレクター)

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