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瀬戸内物語 北川フラム

(71)徒然なるままに ダイナミズムこそ現代

2016/12/31

 年末のひと日、珍しくゆったりした時間がとれて、そのあいまに追われている作業をやるというのは、不思議な心持ちがすることでした。徒然(つれづれ)なるままに机に向かって書きます。

 はじめは鎌倉近代美術館の松本竣介展。グロッスやモジリアニ、ルオーの影響を受けながらも、太い線、淡い色味で構築物を描くなかに彼の資性が知れ、戦中、戦後のわずかな期間のなかで、庶民のささやかな、爽やかさをデッサンし、故船越保武さんらとグループ展をやるつつましさは、政治的に動く仲間たちからも理解されうる作法だったのだと思います。

 次に横浜のBankARTで柳幸典展を見ました。言わずと知れた犬島精練所美術館のアーティストで、その力量は現代日本美術界で群を抜いています。その構想力に敬意をもつのですが、どうしても氏の菊の紋章と日本国憲法の扱いにはなじめません。それは観念的な美術関係者へのメッセージにはなるのですが、私の個人的な奥底には届いてこない。それは図像が共有の意味を持ち得ない現代社会の諸相では、うっすらとした記号にしかなりにくいと思うからです。

 戦争画を決して描かなかったと思われていた松本竣介さんに「航空兵群」があったことに表れているように、現代では大衆がどこに居るのか? 文明の諸段階がまだら模様に現実には浸透しあっている、権力がグローバルに諸グループの願望として混ざりあっているとか、と並んで社会の構造が一筋縄でいかなくなっているからだと思います。

 犬島の精錬所に、故・三島由紀夫さんと柳幸典さんが同居していることの矛盾、あるいは面白さがあることのダイナミズムこそ現代なのだとは思われませんか。そしてまた、その近代工場遺産の地に文字通り、植物園が動きだし、一輪の花を開かせようとしている、その総体が顔のない国際的な金融、政治マフィアと対峙(たいじ)しているのだと思うしかない。好漢柳幸典さんに注目してみたいと思うのです。

 さて、同じ日に私はアンヌ・モロー・リンドバーグさん(大西洋横断のリンドバーグ夫人)の“Gift from the Sea”を読みます。彼女は喧噪(けんそう)の都市、日常の家族:私有財産:国家の重さから離れ海に来て、さまざまな貝の性質を楽しみながら、自分の現在を省察するのですが、その心持ちが私自身にも波が押し、返すように洗ってくれるのです。吉田健一さんの名訳があるので、ぜひ一読を。

 そしてまた、水俣病を患った人たちが季刊で出している小冊子「魂うつれ」を読むのですが、前回69号では、渡辺京二さんが石牟礼道子さんや緒方正人さんが思う、加害者をも「許す」ということに触れています。この冊子は「本願の会」の発行になっていますが、この会自体が約50年にわたる闘いと思考のなかで、水俣病を文明の総体のもつ罪として考えるところから始まったことを想起してしまいます。

 その号ではまた先日三艘の打瀬船に27人が乗って不知火海からの「おすそ分け」をもらおうと「句海浄土」という句会(もちろん和歌、狂歌、なんでもよい)をやった報告があって面白い。

 いわし雲 天に網打つ 打瀬船 (吉永理巳子)

 この身をば 風にうたせて 舟あそび (緒方正人)

 The sea smells cnap like
 Autumn leaves swept by brisk winds
 My boat brings me home
      Emily

 今年、私たちや子どもたちによくつきあい、いろいろ教えてくださった大島青松園の山本隆久さんが亡くなりました。大島にも歌、句の達者が多かった。いつかみなさんと海に出て、瀬戸内句会をやりたいですね。

(アートディレクター)

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