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瀬戸内物語 北川フラム

(47)移動に暮らす 興味深い「家船」の考察

2014/12/31

熱気あふれる成果発表大会=大分県別府市

熱気あふれる成果発表大会=大分県別府市

 11月29、30日に福武財団の助成活動成果発表大会が、国東半島芸術祭開催地近くの大分県別府市で行われました。これは全国の美術・文化活動を中心とした地域づくりの活動と瀬戸内海の学術研究を経済的に助成している福武財団が、全国のさまざまな芸術祭開催場所で年1回開催しているものです。

 実に面白く、それぞれの活動グループや研究者にとってお互いの活動の事例を知るだけではなく、研究と現在のアクティブな活動が刺激し合うというユニークで意味深いもので、私はこの会への参加を毎回楽しみにしています。活動も研究も質の高いものになっていて、多くの人に知ってもらいたいものです。

 ここで触れたいのは「家船(えぶね)」の研究で、厚香苗さん(立教大アジア地域研究所特任研究員)と藤原美樹さん(福山大工学部講師)が継続的に発表されています。

 家船は瀬戸内海に訪れるようになって、その存在を確かと知るようになりました。アーティストたちのなかには、家船を作品の発想の出発にする人がいて、この水上生活者は瀬戸内海文化を掴(つか)むうえで大切なことだと思ってきました。

 厚さんは大分県臼杵市諏訪津留での文化人類学的・民俗的な調査を行い、以下の目的を掲げています。

 〈「津留の人」は自分たちの村を「船乗りの村」と表現し、その構成員は根拠地に「陸(おか)上がり」した人、福岡県北九州市や大阪府大阪市港区などの港湾都市に集団で働きにでてそのまま定住した人、朝鮮半島で船に乗っていたが第二次世界大戦後に引きあげてきた人、現役時代を貨物船などの乗務員として移動に暮らし、老後を津留で過ごす人など、船にかかわる多様なライフストーリーを持つ人びとである。本研究では、瀬戸内海を交通路とした「村落から大都市へ」という画一的な見方をされがちな近現代的な人びとの移動と、地域で育まれてきた知のあり方の多様性を、古くから流動的な生活をしていた「船乗りの村」の伝承を素材として解き明かすことを目的とする。〉

 (厚香苗「船乗りの村」の陸地定住―瀬戸内海沿岸漁村と大都市をつなぐ民俗学的研究―より)

 厚さんの言うように、私たちは「定住的な稲作農耕を営む人びとの文化を基礎として」きたが、柳田国男が言う山人などは、社会中心からみる民俗学の視点への猛省を促すものだったし、そこを引き継ぐ宮本常一、谷川健一、網野善彦らの作業は海の人、移動する人びとから日本社会を見直そうとするものでした。

 またそれらの「陸上がりの人」の調査からみえるものは、彼らが「自分たちのネットワークを頼りに生活してきた。だから一見、ありふれた過疎化のプロセスにあるようにみえたとしても、それは高度経済成長期に高まった定住への社会的な圧力が弱まり、移動に暮らす本来の姿に戻りつつある」のであり、瀬戸芸の該当地域の調査研究が意味を持つ由縁だと思います。

 瀬戸内海の島々を巡って感じるのは「家船」への強い愛着です。そしてアジアの海への親密度です。さらに瀬戸芸来島者が持つ、移動への強い底流です。

 藤原さんの研究は、家船漁民が「陸上がり」した後の陸の家の空間構成が家船そのものに似ていることに着目したもので、これは面白いものでした。ちなみに「漁船にみえる空間構成と漁民家について、関連性はみえない」とのことです。

 ついでに言えば、現在、広島をはじめ日本に5艘(そう)ある「カキ船」の記憶と系譜に関する島村恭則さん(関西学院大社会学部教授)の発表も面白く、私の出身地である新潟にある高級料亭の「カキ正」の初代主人も瀬戸内からの移住者で、この主人が瀬戸内を思って詠んだ句があるというのも新知識でした。

(アートディレクター)

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