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瀬戸内物語 北川フラム

(44)大杉栄の眼差し 生の本質への深い理解

2014/09/27

丸亀城から望む瀬戸内海。幼い大杉栄を育んだ地だ

丸亀城から望む瀬戸内海。幼い大杉栄を育んだ地だ

 香川の人物は誰か? という話になった時、弘法大師空海は別格として、平賀源内、菊池寛、大平正芳と挙げた際、大杉栄がいるよ。との声があがりました。丸亀には生後4歳までしかいなかったし、大杉自身も14歳までいた新潟の新発田のことをしばし書いていて、新発田の空、官舎のあった歩兵連隊の練兵場での遊びは大杉のアイデンティティが色濃く投影されるところですが、金毘羅さんに産湯をつかったかもしれないし、母親が栄赤ちゃんをおぶってお参りしたことぐらいは想像できます。最低限、瀬戸内の海水は彼の体内に流れているわけで、讃岐人国記はたちまち豊かになってきます。私はここに崇徳上皇を入れたいし、中西太が加えられて画竜点睛(がりょうてんせい)になると思うのです。

 大杉栄は明治44年の大逆事件で日本社会が凍りつき、永井荷風や谷崎潤一郎、与謝野鉄幹らが自らの表現を変化させざるをえなくなった冬の時代、

 「美はただ乱調にある」

 「僕は精神が好きだ。」

 「僕は文壇諸君のぼんやりした民本主義や人道主義が好きだ。少なくともかわいい。しかし法律学者や政治学者の民本呼ばわりや人道呼ばわりは大嫌いだ。聞いただけでも虫ずが走る。社会主義も大嫌いだ。無政府主義もどうかすると少々いやになる。僕の一番好きなのは人間の盲目的行為だ。精神そのままの爆発だ。」

 「思想に自由あれ。しかし行為にも自由あれ。そしてさらにはまた動機にも自由あれ。」

 などの分かりやすいコピーを引っさげて、大正ロマンチシズムの地ならしをし、一人果敢に気を吐いた好漢であることは知られたところで、その後も時代が閉塞すると彼の著書はよく読まれることとなります。

 最近も中森明夫が「アナーキー・イン・ザ・JP」というパンクロックのミュージシャンに大杉栄が降りてきてアジテーションをするという奇想天外の面白い小説を発表しています。その自由な精神、シンプルな行動は人の共感を呼ぶのですが、ただ残念なことに、日本ではアナーキーという言葉がただの政治的なアナーキズムとなって、無政府主義と訳され、忌避され、大杉栄その人がもつ大きな可能性があまり知られていないのです。

 瀬戸内国際芸術祭では、この土地を理解するために、1400万年前の地殻の移動、20万年前からのホモサピエンスの大移動から辿(たど)っていかなくては、日本列島や海の豊かさが分からないと、地形的、気象的、歴史的な特性を学んできましたが、このことと大杉栄は深いつながりがあります。そこに触れておきましょう。

 大杉は、ほとんどいいがかりのような罪で5回、延べ1100日間、牢屋入りしていますが、そのなかで一犯一語とうそぶいて語学を勉強し、何冊かの翻訳をしています。クロポトキンの「相互扶助論」「革命家の思想」、ロマン・ロランの「民衆芸術論」、ファーブルの「昆虫記」、ダーウィンの「種の起源」など。これらの読書・翻訳が彼の血肉になったとすると、そこに見えてくるのは生命の不思議と進化への好奇心、弱肉強食・優勝劣敗ではない類の助け合いへの関心なのです。

 特にクロポトキンについてですが、彼はもともと地理学者で世界各地を歩き、その民俗・生活から考察する思考は、宮本常一につながる人類の本質・民衆への深い共感によるもので、アナーキズムと言われているものが、生の本来の在り方に関するきわめて深い理解から出発しているものだということが分かってきます。革命家・大杉栄は同時代の小説家・夏目漱石と職業としては対蹠的(たいしょてき)に見えながら、ほとんどおなじような眼差(まなざ)しで日本と世界を考えていたようです。

(アートディレクター)

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