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瀬戸内物語 北川フラム

(38)文化的景観 アートは島の灯台

2014/03/29

さまざまな雑誌の表紙を飾った瀬戸内のアート

さまざまな雑誌の表紙を飾った瀬戸内のアート

 瀬戸内海を囲む13の自治体が集まる瀬戸内海環境保全協会という組織があり、そこが「瀬戸内海」という自然、社会、人文科学の総合誌を出していて、とても勉強になる論文が載っています。その64号(2012年9月号)の篠原修さんの論文「大動脈・瀬戸内海の風景の行方」が瀬戸内海を根幹からつかんでいるのです。篠原さんは東大で都市論を教えていた方で、今回は篠原先生の論文に沿った瀬戸内海についてです。

 今年は瀬戸内海が国立公園に指定されて80周年になりますが、この指定は、それまでの日本三景である、厳島、天橋立、松島という日本人的な美意識をうけつつ発祥の地であるアメリカからもたらされた国立公園という制度によるものです。アメリカでは開発によって失われる自然の豊かさを保護し、自然の崇高さを教えるものでしたが、これが制定された昭和初期は、第一次大戦後の不況の時代であり、国立公園をつくって外国人観光客を誘致しようとする国策でした。篠原さんは、日本の国立公園指定はもともと観光地開発だったことに注意を促しています。

 さらにこの時の指定は備讃瀬戸であり、西の水道風景は除外され、松島の多島海風景を受け継ぐものとしてであったといいます。それは同時に指定された大雪山国立公園という手つかずのアメリカ型大自然とも全く違い、港があり、ミカン畑のある風景であり、この多島型、里海的海が日本の風景の美の典型となっていくのです。ちなみに江戸時代、林羅山の息子の春齋が「三処の奇観」として挙げた3つはいずれも海とつながっていて、さらに厳島では神社が、天橋立と松島が寺の添景になっているのです。

 篠原論文では、もちろん、瀬戸内海が古くから交通の大動脈であったことがおさえられているし、斜面いっぱいのミカン畑、遠浅な海一面に展開される塩田は人口稠密(ちゅうみつ)な日本列島ならではの風景でありますが、桃山時代からの築城ブームから始まる採石場から風景は壊れはじめるとの指摘もあります。決定的だったのは、戦後の臨海工業地帯の造成でした。古くからの交通の利便性、阪神の大都市が近くにあること、そして塩田開発で工業用地へと変えやすいことによるものです。そしてこれはそれ以前の日本三景では起きなかったことでもあります。それは東海道に先行する国土軸でした。そして四国と本州を結ぶ大橋。ここで篠原さんは重要な指摘をしています。

 ここに「国民的な反対が起こらなかったのは、やはり、日本人の美意識が自然に人文的要素が加わっても、それを自然風景と考えているからであろうか。スケールは全く異なるが、日本庭園には橋が存在していて、むしろ橋によって庭園風景に趣が添えられていると考えて来たように」

 篠原さんは島における美術館などに反対の立場です。そして現在の風景は国立公園たりうるか? とさえ言います。それでもなお、

 「瀬戸内海には何の価値もないのかと言えば、そんな事はないと答えたい。〈略〉瀬戸内海には持って生まれた自然風景をベースに、時代毎の人間の手が刻み込まれて来た。その結果が現在の瀬戸内海の風景に他ならない。古代からの津の風景、信仰の風景、みかん畑の風景、採石の風景、塩田の、後に臨海工業地帯となった近代の風景、本四架橋の風景、瀬戸内海には人間の手が入った風景が積層しているのだ。これこそは〈略〉文化的景観そのものではないか」

 と語るのです。

  島が隔離、孤立し、過疎になって地域が減退していくなかで、私たちは外部と島をつなぐものとしてアートを選びました。これが現代の文化的積層と考えたからです。実際、島へのもっとも良質なシンボルとしてのアートが雑誌の表紙を飾ることが多くなりましたが、島の灯台として、あらためて機能し始めたようにも思われるのです。

(アートディレクター)

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