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瀬戸内物語 北川フラム

(36)海の回廊に学ぶ 重層する多様な風景

2014/01/28

写真左手が男木島と女木島の間の加茂ケ瀬戸

写真左手が男木島と女木島の間の加茂ケ瀬戸

 2011年3月11日の津波のあと、海について今までのびのびと思っていたことが変化しているのを感じている人が多いようです。海を社会的、文明的に考えざるを得なくなったと言ってもよいでしょう。

 椎名誠さんは童謡「海は広いな大きいな」を唄(うた)えなくなったと書いていました。海は有限で大気圏内を循環する。放射能の汚染をも浄化する海という錯覚をしそうだから、今まで好きな歌だったからといっても、もう唄えないと言うのです。もちろん、これは津波そのもののことではなく、そこで起きた原子炉の溶融後のことについてなのですが。

 僕もこの7、8年、瀬戸内に通い、その海から多くを享(う)け、元気とさわやかさをもらってきましたが、椎名さんが言うことに同意してしまいます。しかしそれでも家族や友人をなくした石巻の漁師や海に関わって生活している人々が被災後、いち早く「海は自分たちの生きる場だ」と考え、11年8月に開いたシンポジウムに、海の復権を掲げている瀬戸内国際芸術祭に携わっている私をゲストとして招いてくれたのです。海と関わる私たちは、海を大切にしなければならないとの思いを、ますます強くしました。14年の年頭にあたって、海に対するスタンスをしっかりともたなくてはいけないと思うのです。

 その意味で、最近、海についての詩が気になることが多くなりました。海についての深い思いがなくては、3・11以後には耐えられなくなっているのです。

 谷川俊太郎の40年も前の詩を紹介します。

「旅4 Alicante」
一枚の絵葉書を見る
思い出ではない
今でもない

心は透けている
心の向こうに海が見える
暗くもなく眩しくもなく

さえぎるな
言葉!
私と海の間を

こめかみに
一粒の汗
地名の
なんという明晰

 海は深い存在として作者と社会のなかに横たわっているように思えます。これを出発に、この連載も瀬戸内海を中心に歴史・民俗・社会を考え、日本列島、地域全体を展望するように続けていくことにします。

 はじめは西田正憲の「瀬戸内海の発見」(1999年)です。この本は瀬戸内海を中心に、全国の国立公園の管理に携わってきた著者が、瀬戸内への深い愛情を持ちながら、明治時代の日本人とヨーロッパ人の風景記述をたどるところからはじめ、それ以前の紀貫之の「土佐日記」以来の景観論を検討するというもので、その重層する多様な風景を自然景観、人文的景観から検証しています。

 「瀬戸とは海峡のことであり幾多の海峡に囲まれた海の回廊が瀬戸内海で、そこにはさまざまな歴史の重なりと文化の広がりが見える」という著者の視点は、朝鮮通信使から始まり、直島文化村、庵治石とイサム・ノグチまで広がり、そのなかに万葉集、塩田、打瀬船、精錬所、ハンセン病療養所などが透けて見えるのです。

 大小あわせて3千もの島がある瀬戸内海は速吸瀬戸、早鞆瀬戸、音戸瀬戸、大須瀬戸、下津井瀬戸、塩飽瀬戸など、なるほど瀬戸が多い。瀬戸がある場所では海流が速く走る。当然、昔は海賊が活躍したわけです。そこに海の多様さと景観の見事さが生まれるのです。瀬戸内を学ぶ出発として、この一冊はよい入門書になると思います。

(アートディレクター)

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