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瀬戸内物語 北川フラム

(32)芸術祭最終章へ 声をあげ始めた海

2013/09/28

制作中のシーボルトガーデン=本島

制作中のシーボルトガーデン=本島

 能登半島北端の石川県珠洲市で、この文章を書いている。瀬戸内国際芸術祭の秋会期開始を約1週間後に控え、海を巡る思いは、ますます強くなっている。

 この間、休校中の男木島の小中学校に子どもが戻るかもしれないとの報道を知った。瀬戸芸開催中の島の元気を見て、子ども(当然親もだと思う)が島に住みたいと思った、とうれしい話だった。この喜びを糧にして、ますます謙虚に自省すべきだと考えるのだが、これには海が持つ豊かさと、その海を捨てつつある日本の人々(世界の人々もそうだが)への警鐘となると同時に多くの可能性を示唆してくれるのだ。

 この夏、瀬戸芸では海を舞台にした催事が数多くもたれた。指輪ホテルは海に電話ボックスを設置して6人の女性たちが宮本常一の世界をバックボーンにした芝居。フィンランドのマーリア・ヴィルッカラとティモ・トリッカによるトーベ・ヤンソンへのオマージュとなった子ども創作劇は、照明で美しく輝く家が海を漂った。

 大島の田島征三による「青空水族館」や男木島の漁船ペイント、伊吹島の「伊吹しまづくりラボ」やウキ6万個による「沈まぬ船」、春には沙弥島の5つの島の人々が作った「そらあみ」など、海そのものが主題になった作品が多かった。

 その他では豊島に、ゴバンノアシという実をかたどった船がホールになった台湾のリン・シュンロンの作品が作られ、パフォーマンスがこれに参加して、彼らは他の島も巡った。小豆島の福武ハウスでは、アジア7カ国の美術関係組織が共同で、ひとつの集落を通して、日本とつながるという画期的な国際交流が始まったのだった。

 昨日、私は奥能登の珠洲に来て野々江町キリコ祭りの行列を見て、誰もがどの家でもご馳走になれるもてなしの風習という、濃密な地域の文化を知ったが、これは昔、日本各地で行われてきたことでもあった。

 今日は朝早く漁協の市場に行ったのだが、そこで真鍋姓の人に出会い、その方の父は愛媛出で、祖先は岡山の真鍋島だったことを聞いた。真鍋姓の人たちは、今、瀬戸芸を知り、瀬戸内海が注目されていることに沸き立っているとのことである(少しオーバー)。真鍋水軍への記憶がよみがえり、海が距離の遠さを超えて、地域と地域を繋いでいて、それが奥能登の珠洲ともつながっているのだと言われる。

 そうなのだ。私たちの列島は海を舞台に州や鼻でつながっていた。瀬戸にやってきた海人(あま)族は紀州に行き、太平洋沿岸を遡上(そじょう)して気仙沼に至り、北方からの人々と出会い大漁業団をつくる。面積61番目の国が、島をもつことによって海岸線が6番目に長い国になり、豊かな文化をつくることができたのである。この点と点のつながり、移動の早さが日本の生活風習と文化を作ってきたのだ。香川も国内では同じような特徴をもっている。

 「海の復権」を掲げた瀬戸内国際芸術祭は、現代美術による場の力の発見と、自然・文明・社会と人間の関わりを表す美術そのものの力によって多くの現代人を引きつけてきたが、同時に17万年前にアフリカで生まれたホモ・サピエンスが海を拠点に世界を舞台にして地域を豊かにしてきたことを気付かせてもくれた。

 ただバックミンスター・フラーが言うように宇宙船地球号は、その操縦を間違えて、そろそろ危なくなってきているのだ。私たちは宮本常一に導かれ、レヴィ・ストロースがつないで世界各地の個々の豊かさを知り、それを大切に思うところから、再度、この瀬戸内海を見つめ直したいと思う。

 この秋からは瀬戸内海をヨーロッパに伝えたシーボルトにちなんだ庭園もオープンする。海はいよいよ、その声をあげ始めたのだ。

(アートディレクター)

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