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瀬戸内物語 北川フラム

(25)「椰子の実」と瀬戸芸 海は人を引き寄せる

2013/02/23

ポスターのデザインを手掛けた原研哉さん(右端)と総合ディレクターの北川フラムさん。左は自ら参加を希望した南果歩さん=東京都渋谷区の渋谷ヒカリエ

ポスターのデザインを手掛けた原研哉さん(右端)と総合ディレクターの北川フラムさん。左は自ら参加を希望した南果歩さん=東京都渋谷区の渋谷ヒカリエ

大勢のマスコミの注目を集めた東京の企画発表会

大勢のマスコミの注目を集めた東京の企画発表会

 わが捨てしバナナの皮を流しゆく潮のうねりをしばし眺むる

 歌人で仏教美術研究者である会津八一(あいづやいち)が、40歳の時に瀬戸内海を旅した時に詠んだ歌です。時は大正ロマンチシズム盛んな1921(大正10)年のこと。

 この20年ほど前の1900(明治33)年に、島崎藤村は「椰子の実」の詩を発表しています。もちろん、舞台は瀬戸内海ではなく、この2年前に友人の柳田国男が三河(愛知県)の伊良湖岬(崎)にヤシの実が流れ着いたときのことを語ったのに想を得た、というのはあまりに有名です。

 僕が二十一の頃だつたか、まだ親が生きてゐるうちぢやなかつたかと思ふ。少し身体を悪くして三河に行つて、渥美半島の突つ端の伊良湖崎に一ケ月静養してゐたことがある。海岸を散歩すると、椰子の実が流れて来るのを見附けることがある。暴風のあつた翌朝など殊にそれが多い。南の海の果てから流れて来る。殊に椰子の流れて来るのは実に嬉しかつた。東京へ帰つてから、そのころ島崎藤村が近所に住んでたものだから、帰つて来るなり直ぐ私はその話をした。そしたら「君、その話を僕に呉れ給へよ、誰にも云はずに呉れ給へ」といふことになつた。

 〈「定本柳田国男集 別巻第3」(筑摩書房)所収「藤村の詩『椰子の実』」より、一部略〉

 名も知らぬ遠き島より
 流れ寄る椰子の実一つ
 故郷(ふるさと)の岸を離れて
 汝(なれ)はそも波に幾月

 ここには「小諸なる古城のほとり 雲白く遊子(ゆうし)悲しむ」(千曲川旅情の歌)と詠んだ藤村ならではの旅に対する思いが込められていて、第1回目の「瀬戸内国際芸術祭」にあれだけ多くの人が来てくれた理由がよく分かります。

 流れ寄るヤシの実一つは、遠く離れ、目には見えない島と島、そこに住む人と人をつないでいるのです。それはまさに、人間だけが持つ想像力ともいえるでしょう。

 はるか3万年前、インドネシアからフィリピン、台湾、沖縄を経て、この日本列島に渡ってきた私たちの祖先は、北へ向かう鳥、流れ寄る木の実を頼りに、丸太舟、筏(いかだ)のような船でまだ見ぬ、いつ着くとも知れない、未知の、未触の土地へと船出したのです。植物の種子や苗を携えての出発でした。記録や記憶に残されたものを読めば、着岸は奇跡のようなものだったし、まして家族を呼んでくるなんて大変なことだったでしょう。

 藤村の思いは遥(はる)かな歴史以前にさかのぼるものでした。ヤシの実の話を藤村にした柳田は、それを「海上の道」として書いているし、その学恩を受けた民俗学者の宮本常一は「忘れられた日本人」で、海と島と旅をめぐるダイナミックでありながら、厳しい人間の冒険と生活について伝えてくれました。

 瀬戸内海は、それら冒険者たちがほっとする静かな、豊かな場所であり、日本列島のコブクロになったのです。

 この20日、東京で「瀬戸内国際芸術祭」の企画発表会があり、報道関係者の人々でいっぱいでした。2回目の芸術祭への期待は私たちが考える以上のものでした。瀬戸内に来られる人ひとりひとりが、島がそれぞれ個性を持ち、独自の、魅力的な生活が築かれていることに感動し、口伝えで広まっていったのです。それはまさに、私たちの祖先の遺伝子が騒いだとしか思えません。それだけではなく、海に生まれた生命のDNAがうごめいたようにも思えるのです。コミュニケーションデザインを担当する原研哉さん、出演者の南果歩さんも、そんな感動を話してくれました。

(アートディレクター)

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