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瀬戸内物語 北川フラム

(22)海を渡る旅 身体で、五感で味わって

2012/10/27

海ににょきっと突き出した山? 瀬戸内の船旅は新たな発見や人との出会いがいっぱい。来年もまた、楽しい旅をしてみませんか

海ににょきっと突き出した山? 瀬戸内の船旅は新たな発見や人との出会いがいっぱい。来年もまた、楽しい旅をしてみませんか

 来年3月20日から第2回瀬戸内国際芸術祭が始まりますが、この10月16日に実行委員会の総会があり、その概要が発表されました。

 最近は瀬戸内海の島や沿岸に関心が高まり、報道されることも多くなりましたが、それらのコメントの中に「来年はこの地で国際芸術祭が開かれます」と、ほとんど入るようになっています。ありがたいことです。

 芸術祭に多くの人が来られた理由は、いろいろあるでしょう。もちろん現代のトップアーティストが、瀬戸内海とその島に寄り添ってつくった作品の魅力が多くの人を引きつけました。さらにそれらの作品がつくられる場所、作品のよって立つ景観、集落、生活を知ることによって、都市文明の中での喧噪(けんそう)、競争、興奮、刺激、大量の消費とは違う、いわば「忘れられた日本人」「遺伝子の還(かえ)る故郷」を知ったことが挙げられます。

 実際、「ひとつひとつの島が、こんなに違い、個性を持っているとは知らなかった」「島が山だなんて、来るまで思ってもみなかった」「島の人があいさつをしてくれ、喜んでくれて、うれしかった」「集落の家が密集していて、それも美しいので興奮した」「漁と農業を一緒にやっているなんてビックリ」「海から見ると島が水の中にそのまま浮かんでいて不安になった」「船に乗っていると島の形がグングン変わっていって不思議な感じがする」「着岸するって、こんなにデリケートで大変だなんて初めて知った」「船の揺れって気持ちがいいもんだな」といった感想などいろいろでした。

 一昨年の芸術祭の最中、私は「こんなに多くの人が来てくれるのは、現代美術のすごさや、島や海の楽しさとともに、これら全体を含んだ旅がこの芸術祭の中に含まれているからだ」という思いを持ちました。人々は遠いこの地の港に、車や電車で来る、そして島に渡る、さらに歩く、という身体全体、五感を全開した旅の醍醐味(だいごみ)を味わうのです。その過程で、1カ所の旅行に行く、最新の情報をできるだけ多く知る、最新で最大を! という欲張りな現代風価値観から離れていき、海や空や樹木や花や葉がひとつひとつ生命の輝きを持っていることを、身体全体で感じたように思えるのでした。

 瀬戸内を2度にわたって旅した西行は、たとえば春、木々や谷の流れが、それぞれに生命の輝くことを愛し、その中に自分の生理が溶け、響くことを楽しんだ人でした。

 何となく春になりぬと聞く日より
 心にかかるみ吉野の山

 雲雀(ひばり)あがるおほ野の茅原(ちはら)夏くれば
 涼む木かげをねがひてぞ行く

 そんな自然のひとつひとつと、わが身、わが五感の感応を、彼は次のような歌に込めました。

 願はくは花の下にて春死なん
 そのきさらぎの望月(もちづき)のころ

 西行は歌枕としての名所旧跡を詠(うた)ったわけではなく、奥州への旅にしろ、讃岐に来てとどまるにしろ、その土地での身体の感応を大切にした人でした。それ故、瀬戸内の漁や生活を詠うことができたのです。

 さだえ(さざえ)棲(す)む瀬戸の岩壺(いわつぼ)求め出でて
 いそぎし海士(あま)の気色なるかな

 旅は空間を渡ることでもあり、時間をたどることでもあるのでしょう。多くの人が瀬戸内を旅し、自分と、人類の来し方に思いを寄せることができた、それが多くの人の思いだったように思われます。そのような旅をまた、ぜひ。

(アートディレクター)

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