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瀬戸内物語 北川フラム

(20)海を渡るイノシシ 現実が問う共生の意味

2012/08/25

小豆島に向かって泳ぐイノシシ=2008年12月10日、小豆島町坂手湾(青木隆さん提供)

小豆島に向かって泳ぐイノシシ=2008年12月10日、小豆島町坂手湾(青木隆さん提供)

 この1カ月、私は新潟県の越後妻有(つまり)という地域をベースにしていますが、瀬戸内から送られてきた8月6日付の四国新聞の記事を見て、心が騒ぎました。なんと、この1年間に香川県内で5617頭のイノシシが捕獲されたというのです。

 あの美しい現代に残るデザインの花札「猪(いのしし)・鹿・蝶(ちょう)」の花形役者ですが、西讃の島々を渡るたびに、イノシシの被害を聞き、鉄砲打ちと同船することが多くありました。小豆島の「しし垣」は、猪・鹿・猿対策として江戸時代に造られた小豆島版万里の長城で、昔からその被害が並々ならぬものであったことが分かります。

 また屋島に登ると、屋島寺から屋島ケーブルの山上駅までの道には、イノシシをまとめて捕獲するための最新鋭の囲いわなが設置されていて、ここでもイノシシ恐るべし、と感じてしまうのです。なんと瀬戸内国際芸術祭の展開範囲は、猪・鹿・猿という現代の中型獣ご三家が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する地区と全く重なるのです。

 里山は、人間にとっても、中型獣にとっても、まさに荒れなんとしています。それは人にとっては再建する場で可能性が残っているのですが、獣にとっては最後の生存の場だという主戦場なのです。

 以前、東北のツキノワグマが長芋を1メートルも掘って食べている報告を見たことがあります。食べるものが、山でも無くなっているのです。人里に出没する一歩前の悲しい姿。獣や動物、鳥、昆虫、そして木々や植物と、人間がどう折り合いをつけていくのか。

 それは現代文明、原子力を含めた科学とどう折り合いをつけていくのか、という課題とともに、両面の課題となっています。別の言い方をすれば、進歩とか開発という考え方を再考せざるを得ない事態だともいえるものです。

 獣害についてはここまでにして、イノシシに目を向けてみましょう。海を渡るイノシシの姿には、壮絶さが感じられます。北海道や三陸の島では、海を渡った鹿の繁殖地が有名ですが、瀬戸内海ではイノシシが海を渡る。彼らは1頭で、あるいは群れをなして泳ぎきるのでしょうか。

 このイメージは5万年前、世界中に散ったイブの子孫たちの海上の道を想像させます。未触の地を求めて、といえば冒険的ですが、なぜ何も分からない未知の世界へ、住み慣れた場から脱出しなければならないのでしょうか。そこのところがどうしても分からない。男木島の「借耕牛(かりこうし)」は、船から飛び降りて飼い主に向かって泳ぎます。そこには人間的情緒がありますが、何も知らない、待つ人もいない、それどころか永遠に行き着く島さえない大海に身を投げ打つ動機とは、何でしょうか。

 最後は佐渡のタライ舟伝説を紹介します。毎夜、タライ舟で愛する男がいる対岸の柏崎に会いに行っていた女性に対し、ある夜、その男が目印となる明かりを消してしまったという話がありました。日本海の荒海の夜に、文字通り命の明かりともいえる、この灯を消されてしまった一人の女性のことを考えれば、凍りつくような話であります。

 イノシシを巡る思いはつらく、厳しい想像の海へとつながっていくのです。

(アートディレクター)

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