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瀬戸内物語 北川フラム

(13)豊かな旅の交わり 渡り・学び・返し・伝える

2012/01/28

両墓制などで知られる高見島の狭い路地。急な坂と石垣が続く。門さんによると島の人口は現在、39人という

両墓制などで知られる高見島の狭い路地。急な坂と石垣が続く。門さんによると島の人口は現在、39人という

 この1月中旬、高見島に渡りました。多度津の港から乗用車が数台ほど乗れるフェリーで行き、帰りは雇い船です。来年の瀬戸内国際芸術祭の舞台の一つになるので、そのための説明会なのですが、僕にとっては楽しい勉強。思えば、多度津港は空海の頃からの港で、印象深かったのは宮部みゆきの「孤宿の人」。幕末の妖怪といわれ、丸亀藩に幽閉お預けになった鳥居耀蔵とその女中になった主人公との怖いけれども心が通う、その小説の中で、多度津港や丸亀港は金毘羅さんに向かう人々が上陸する中継地として描かれていました。多度津は讃岐が外界と接続する開口部になっていた古い港なのです。

 高松からはスタッフの段取りに沿って動くので、一人旅は東京から高松まで。かなり準備された旅とはいえ、さらに週に一度は来る親しい讃岐の国とはいえ、異なった場所への旅はわが人生の来し方、行く末を考えさせるものとなるのです。

 なるほど旅は人生そのものであり、その集約です。高見島では漁協組合長の門(かど)和則さんから、漁のことや塩飽の常食である茶粥(ちゃがい)の話を伺いました。そこで急きょ、多度津の食事処(どころ)に連絡して、昼はサツマイモを入れた茶粥を食べることができました。

 前回は宮本常一さんの父、善十郎が息子の初めての旅の際に与えた10カ条の最初の四つを挙げましたが、そこにも「その土地の名物や料理はたべておくのがよい」とありました。以下、第5条以降を列記します。

 (5)金というものはもうけるのはそんなにむずかしくない。しかし使うのが難しい。それだけは忘れぬように。

 (6)私はおまえを思うように勉強させてやることができない。だからおまえには何も注文しない。すきなようにやってくれ。しかし身体は大切にせよ。三十歳まではおまえを勘当したつもりでいる。

 (7)ただし病気になったり、自分で解決のつかないようなことがあったら、郷里へ戻ってこい、親はいつでも待っている。

 (8)これからさきは子が親に孝行する時代ではない。親が子に孝行する時代だ。そうしないと世の中はよくならぬ。

 (9)自分でよいと思ったことはやってみよ。それで失敗したからといって、親は責めはしない。

 (10)人の見残したものを見るようにせよ。そのなかにいつも大事なものがあるはずだ。あせることはない。自分のえらんだ道をしっかり歩いていくことだ。(宮本常一「民俗学の旅」講談社学術文庫)

 (4)までは旅の心得であったのに対し、これらは世間師(しょけんし)であった父、善十郎の思想のエキスではないでしょうか。おそらく、横暴でただ働かされるだけだと思っていた父の子への思いを知った時、常一は目が覚めるほど驚いたに違いありません。まさに親は親だったのです。

 常一は、生涯をこの10カ条に沿って生きたように思えます。世間師は世間を渡る人です。渡ることによって学ぶ人です。その渡ることで学んだことを島の人、集落の人に返す人のことでした。それを子にも伝えようとしたのが、この10カ条だったのです。

 瀬戸内国際芸術祭が望んだものは、現代の人にとっての旅、とりわけ島に渡ることによって旅の凝縮したものを知ってもらうことでした。例えば、ヨーロッパ文化のエッセンスは、さまざまな生活、宗教が十字にクロスする地中海にあったことを、多くの研究者が伝えてくれています。われらが瀬戸内海もそうした海として古くからありました。一昨年の芸術祭では、多くの人が島に渡り、それぞれの来し方を考えました。それだけではなく、さらに人類そのものの来し方を考え始めた人も多かったのです。

 高見島の漁師である門さんにお会いして、私は古い時代の良さと海の生活の一端を知りました。これが旅の豊かさです。そこに世間師であった宮本善十郎を見た気さえするのです。文化の交わる瀬戸内海の島に渡ることは、多くの人にとって、この列島に生きることの豊かさと厳しさを教えてくれるのです。

(アートディレクター)

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