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瀬戸内物語 北川フラム

(12)宮本常一の訓え 旅が人間を作っていく

2011/12/24

12月18日に島キッチンで行われた餅つき大会。豊島の方々、島キッチンのお母さん、来場者、こえび隊ら大勢の人でにぎわった

12月18日に島キッチンで行われた餅つき大会。豊島の方々、島キッチンのお母さん、来場者、こえび隊ら大勢の人でにぎわった

 昨年、暑かった105日間の瀬戸内国際芸術祭が終わった後、それぞれの島で関連施設が開館し、約1年がたちました。直島の地中美術館、李禹煥美術館などへは、相変わらず多くの人が来られています。犬島は「精錬所」が人気の的。豊島は豊島美術館と島キッチンを中心に、美術の島としての認知が広まってきたようです。男木島・女木島ではオンバ・ファクトリー、川島猛とドリームフレンズ、愛知県立芸術大学がイベントを軸に展開し、大島もカフェ・シヨルが毎月4日間程度オープンし、週末には島に渡る人が増えました。小豆島や次回開催される中西讃の島々での企画検討も始まりました。

  これらの活動の目的は地域が元気になることであり、島や海の大切さを皆で確認することです。「海の復権」をテーマに掲げた理由がここにあります。「ART SETOUCHI」として広報されますが、美術のバックボーンとなっているのは、あくまでも島の生活、集落、土地、自然で、そこに注ぐまなざしの指針を、私たちは宮本常一さんの活動から学んできました。

  宮本さんは4千日、地球4周以上を、離島を中心に日本中を歩いてきた民俗学者でした。それもその土地の古老から話を聞くことが中心だったので、単なる学問としてではなく、生き生きとした日本列島の姿を映し出したものでした。それが離島振興にかける情熱となり、いわば救世済民ともいうべき、土地に根差した産品の開発、消えゆく芸能の再興、民俗資料の保存・展示につながっているのです。例えば新潟県の佐渡では「おけさ柿」「鬼太鼓座」「小木の資料館」として、それらは展開され、個々の地域にとって重要なだけでなく、広く多くの土地の人々を鼓舞してきました。

  その原点の一つが、父からの訓(おし)えにあったと氏は書き記しています。それは自分の生まれた地域と、そこから展望する広い世界についてです。

  宮本さんは周防大島にある東和町(今は合併)出身で15歳まで島に住み、当時の一般的な習慣の通り、幼いころは祖父に育てられました。祖父・市五郎は世間師(しょけんし)といわれた人で、島から出稼ぎでさまざまな地域に渡り、島に戻って世間の諸事情を伝え、そこでの知恵を地元に返すのです。これが地域を豊かにします。

  いくつかの理由で宮本家は没落し、塩の行商やフィジー島まで出稼ぎに行った父・善十郎は、常一につらく当たります。同級生14人のうち、一番優秀だった常一だけが、小学校を卒業して島に残りました。貧しかったからです。その常一少年に父は厳しい労働を押し付けます。当時の常一少年の日記には、父への恨みが書き付けられています。しかし1年後、常一はおじのすすめで大阪へ行けることになりました。その時、祖父と同様、世間師だった父が息子に送った10カ条が素晴らしい。まさに世間師としての面目躍如です。ここでは4条までを挙げておきます。

  (1)汽車に乗ったら窓から外を歩く人をよく見よ、田や畑に何が植えられているか、育ちがよいかわるいか、村の家が大きいか小さいか、瓦屋根か草葺きか、そういうこともよく見ることだ。駅へついたら人の乗りおりに注意せよ。そしてどういう服装をしているかに気をつけよ。(後略)

  (2)村でも町でも新しくたずねていったところはかならず高いところへ上がってみよ。そして方向を知り、目立つものを見よ。峠の上で村を見おろすようなことがあったら、お宮の森やお寺や目につくものをまず見、家のあり方や田畑のあり方を見、周囲の山々を見ておけ、そして山の上で目をひいたものがあったら、そこへはかならずいって見ることだ。(後略)

  (3)金があったら、その土地の名物や料理はたべておくのがよい。その土地の暮らしの高さがわかるものだ。

  (4)時間のゆとりがあったら、できるだけ歩いてみることだ。いろいろのことを教えられる。

  これらの教えが、宮本さんの活動の中心をかたちづくりました。父はそれまでの自分の全人生のエキスを息子に伝えようとしたかのようです。旅が人間を作っていくことを父・善十郎は身に染みて感じていたに違いありません。これが、私たちが瀬戸内の島に渡る訓えとなったのです。

(アートディレクター)

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