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瀬戸内物語 北川フラム

(1)島に行くということ 第一歩は「関心を持つ」

2011/01/29

瀬戸内国際芸術祭の会期中、大勢の人でにぎわった豊島。島の人たちも思い思いのもてなしで来島者を出迎えた(資料)

瀬戸内国際芸術祭の会期中、大勢の人でにぎわった豊島。島の人たちも思い思いのもてなしで来島者を出迎えた(資料)

 瀬戸内国際芸術祭が終幕して3カ月がたちました。私はその「瀬戸芸」の主催者のなかにいて、この事業に関わっていたのですが、同時にこの「お祭り」を、他のサポーターや来島者のみなさんと同じように楽しんでいました。初回は、そのことからお話ししましょう。

 心なごやかになる思い出はいくつもありますが、まず思い浮かぶのは、豊島のあるおばあちゃんのこと。豊島では「瀬戸芸」が開かれると決まってから、「お客さんの食事はどうするんな」と島の人が心配しだしたのです。島内交通のこと、宿泊のこと、トイレのことなど、心配ごとは数あるけれど、何はともあれ、「食べること」です。

 そこで、もともとあったお店やグループで動いた「島キッチン」「島おとめ食堂」、甲生の「片山邸のお茶処(どころ)」ができた以外に、自宅を開放した食事の場所やちょっとした飲食販売所も開店し、「食の豊島」の面目躍如ということになりました。20を超えるお店が開業したわけで、これは直島と違って島の人の手によるものがほとんどでした。

 さてそこで、先ほどのおばあちゃん、何を考えたか。ビールを冷やしておくプラスチックでできた箱を見つけてきて、そこに他のお店で買ってきた清涼飲料水を冷やして入れて、買ってきた値段そのままで売り出したのです。

 時々お寄りすると、水槽の置かれているポリカーボネートの屋根のかかる駐車場のしつらえが変わっていて、亀やカエルの縫いぐるみが置かれていたりする。「店」に人がいない時も往々あって、コーラを飲みたいけど、どこに、いくら、お金を置いていっていいか分からない。

 そのおばあちゃんは、お店を出すことによって、来島者とお話がしたかったのではないか。私はだんだん、そう思えるようになってきました。そうでもしないと、ただ来る人を眺めているしかない。おばあちゃんは自分なりに「瀬戸芸」に関わる方法を見つけたのではないかと。

 豊島では家浦、唐櫃、甲生の3集落を中心に何度も地元説明会を開いてきましたが、多くの人は何のことかよく分からなかっただろう、と実際に始まってから思うようになりました。それまで、町議さんや観光協会長さんや自治会長さんとは、可能な範囲で繰り返し打ち合わせをしたし、実際、25年にわたる産業廃棄物の不法投棄をめぐる住民運動が、不遜な言い方ですが、「人を育て、したたかな住民自治への覚悟を培ってきたのだ」と実感できました。

 この際、「瀬戸芸」の様子を見ながらも積極的に関わってみようと、島のみなさんは思われたようです。新潟の越後妻有にも来られたし、直島にも行かれた。先行する土地の住民の考えを知りたい、と思っておられたのです。

 会期中、ボルタンスキーさんと浅田彰さん、青木野枝さん、戸高千世子さん、キャメロン・ロビンスさんを交えたアーティストトークに島の人々が70人も来られたのには驚きましたが、それだけ真摯(しんし)だったのです。先入観で「瀬戸芸」を批判する人たちは、主として島外の人たちに多かったようです。分かったような物知り顔でご託を並べていただけで、実際には勉強不足でした。住民はもっとしたたかで、深く考え、学んでいったのです。

 この先入観に関しては、研究者や学生、“何でも反対論者”に多く、調査好きの人にもその傾向は強かったようですが、彼らは地域の人が「瀬戸芸」に関わっていく進展の速さに、ついていけなかったのではないでしょうか。

 眼前に広がるこの瀬戸内の「何から学んだらよいか」という質問を、特にサポーターのみなさんから受けました。そこで私は、民俗学者である宮本常一先生の著書『忘れられた日本人』をお薦めしてきましたが、もう一つ、フィールドに出る前に『調査されるという迷惑』(宮本常一・安渓遊地著)を読んでほしいと思いました。

 この本には、地域の文化を調査する側の心得が書かれています。それは他者がある地域に入る時の、旅行者としての心得でもあると感じていたからです。実際、私たちは地域の文化や暮らしの知恵を学ぶのに、非常に参考になりました。旅行者は「島とその島人たちの運命に無関心でいてはならないし、いられるはずはない」こともです。

(アートディレクター)

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