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地域要件 公平な競争に足かせ ―第3部 談合というシステム 11.
 「一般競争入札にすれば談合は減りますよ。でも、このような法律があるぐらいだから…」
 元県土木部の職員は、首をかしげながらある法律を示した。一九六六年に施行された「官公需法」。国などが物品購入や工事を発注するときは、中小企業の受注機会を確保し、その健全な育成・発展を図るという、いわば中小企業保護の「お墨付き」。県や市町にも同様に地元業者への配慮を求めている。
 「きれい事を言っても国が相手にするのはゼネコン。地方の苦労なんか分からない。健全育成が前面にある限り改革はできないよ」
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閲覧場所に並ぶ許可業者の資料。ほとんどが地域要件の対象となる業者のもので、その数は5000冊に及ぶ=県土木監理課
閲覧場所に並ぶ許可業者の資料。ほとんどが地域要件の対象となる業者のもので、その数は5000冊に及ぶ=県土木監理課
 県の九九年度官公需契約実績によると、県発注の公共工事のうち、地元業者が受注した割合は92・8%(件数ベース)。「地元業者のほとんどは中小企業。地元への配慮は国の要請でもあり、ゼネコンじゃなくてもできる工事は地元業者にやってもらっている」と県土木監理課。近年、入札の競争性、公平性が求められているにもかかわらず、この割合に変化は見られない。
 こうした地元偏重の姿勢が如実に表れているのが、入札参加者を地元に本・支店、営業所を置く業者らに制限する「地域要件」と「分割発注」。大きな工事を小さく分割発注することで指名ランクの低い中小業者でも受注が可能になる仕組みだ。
 談合などの不正防止に向け、高松市は今回入札制度を見直したが、地域要件は逆に強まっている。九四年から一般競争入札を取り入れている県も、いまだ地域要件を外した入札は行っていない。
 「多様な入札制度を導入し、競争性の確保には努めてはいる」と綾康広県土木部次長。「ただ、地元業者育成は行政の使命。それが産業の振興にもつながる」と複雑な表情を見せる。
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 「公平自由な競争」と「手厚い地元保護」。こうした政策の相克の間で当たり前のように談合は繰り返される。そこには目指すべき健全な姿は見えない。
 建設業界の就業者数は現在、約六百五十万人。全就業者数の10%を占めている。「不況による失業者を受け入れる雇用のセーフティーネット」(高松市建設業協会幹部)としての役割は確かに大きいが、だからといって談合を正当化する理由にはならない。
 「ある程度の育成策は必要だろうが、その対象はまじめに営業努力をしている中小業者」とは県内の建設業者。
 そうした努力もなく「保護してくれ」という身勝手な業者までもが生き残れるシステムが許されるはずはないという。
 「談合は民主的な方法と業界は抗弁するが、その実は『お上至上意識の中での社会主義』。今後、公共事業は確実に減少する。競争の時代をどう生きるか。業者はもっと真剣に考えるべきだ」
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 東京大経済学部の金本良嗣教授はこうした公共工事の現状を危ぐする。
 「地域住民にとって生産性の低い業者を保護することは税金の無駄遣い。このままでは、建設産業が農業の一部と同じように手厚い保護を必要とする産業になりかねない」
 建設業が日本経済に占める割合は農業より大きい。高齢化が進む中、それを保護し続ける体力が日本経済に残るとは考えられない、という。
 「行政も『健全育成』に一つの線を引く時期が来たのではないのか」
 前出の県職員は最近つとにそう思う。
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