好評を得ている瀬戸内国際芸術祭のコンセプトや、経緯をまとめた「直島から瀬戸内国際芸術祭へ-美術が地域を変えた」が刊行された。第1回の開催から同芸術祭総合プロデューサーを務める福武総一郎さんと、総合ディレクターの北川フラムさんが執筆。アートを軸にした国内外のプロジェクトを牽(けん)引してきた2人による“瀬戸芸”論の集大成とも言える一冊に仕上がっている。

 これまで公式ガイドブック以外に瀬戸芸に関する本がなく、国内外の美術関係者、とりわけアジア諸国の行政関係者からの強い要望があったことから刊行が実現した。

 4章構成。第1章は1989年に直島で始めたアート活動が、瀬戸芸へと変貌していくさまを時間の流れに沿って福武さんがまとめている。30年にわたる活動で得た「在(あ)るものを活(い)かして、ないものを創(つく)る」「経済は文化の僕(しもべ)」「幸せなコミュニティーに生きる」などの持論は説得力がある。

 第2章以降は北川さんが書き下ろしている。第2章では福武さんの考えを北川さんが補足しながら、瀬戸芸の目的や方法論を記述。第3章は四国新聞連載の「瀬戸内物語」の約40編を収めたほか、第3回の瀬戸芸会期中にアップしたブログから一部を転載。第4章では瀬戸芸の課題と展望について言及している。

 2006年からアート活動を共にする2人は、お年寄りが笑顔で暮らせる地域づくりこそが瀬戸芸の目的だと強調。ボランティアサポーター「こえび隊」の活躍、閉校していた男木小中学校の再開などの事例を挙げながら、地域づくりについて熱く論じ、瀬戸内地域が世界の希望となりつつあると説く。本の後半ではアジアの諸地域からの要請に応えようと、アート活動を通じた地域創生について実践的なノウハウも記している。

 現代企画室刊。A5判、231ページ。1600円(税別)。県内の主な書店で販売中。問い合わせは同社、電話03(3461)5082。