「楽しかったね」「またこの島で会おう」―。6日に閉幕した「瀬戸内国際芸術祭2016」は、会場の島々にアートと交流の風を再び吹かせた。創作を追い求めた国内外の参加作家、企画や運営などを支え続けたボランティア、笑顔で大勢を迎え入れた島の住民たち、そして非日常の世界に心弾ませた来場者。それぞれが閉幕を惜しむ中、高松市内でクロージングセレモニーが開かれ、各島では最終の船を懸命に見送る島民の姿があった。芽吹きの春から実りの秋へと駆け抜けた108日間。感動と絆の余韻を保ちながら、瀬戸内の人々は次回開催に思いを寄せる。

 最終日も各会場は大にぎわい。直島では、先日文化勲章を受章した草間弥生さんの作品「赤かぼちゃ」や「南瓜」などのスポットで写真撮影する人が目立った。「海に浮かぶ島々が美しく、船に乗っただけでもわくわくした」と米国のテイラー・ゴラーさん(29)。小豆島や豊島、直島を6日間で巡ったという香港の陣穎賢(チンウェンイン)さん(36)は「作品も景色もすてきで楽しい旅だった」と笑顔を見せた。

 男木港では、地元グループ「TEAM男気(おぎ)」が9隻の船で鳴り物や掛け声を上げる勇壮な「踊り込み」を披露した。瀬戸芸をきっかけに移住家族が増えた男木島。二十数年ぶりという子ども獅子も登場して大きな喝采を浴び、フィナーレを彩った。獅子の使い方を指導した松下玉夫さん(80)は「芸術祭が島の雰囲気を変えてくれた。これからが楽しみ」と目を細めた。

 秋会期の中西讃4島は、30日間の会期を締めくくった。各島の港では、大勢の島民が大漁旗や色とりどりの紙テープで定期船最終便を見送った。伊吹島で暮らす真鍋美桂さん(39)は「大勢が訪れて、伊吹のことも知ってもらえた。閉幕は寂しいが、次回があればうれしい」と期待を寄せた。

 作家らも充実の表情。粟島に作品を出展した岩田とも子さん(33)は「島の人は観光客に(私たちの)作品の説明をしてくれ、会話が弾んだみたい。島の人が作り手の思いを共有し、広めてくれた。相変わらず面白い島だなと改めて思った」と振り返った。本島で制作した眞壁陸二さん(45)は「精根尽き果てるまで力を注いだ作品。会期後も残るなら経年で変化した姿も味わいとなるはず。島に来て、また見たいという人の役に立てれば」と話した。