亡き家族や元恋人らに宛てた届け先のない手紙、はがきを受け付けて展示する三豊市粟島のアート作品「漂流郵便局」。制作者の久保田沙耶さん(28)が近代郵便制度発祥の地、イギリスに今年開局した「英国漂流郵便局」の局長ブライアン・ペインさん(69)が粟島を訪れ、“本家”の中田勝久局長(82)と初対面した。久保田さんは3人のそろい踏みがかなったことに「お二人は周りを引き寄せて笑顔にする力があり、私を支えてくれる。言葉にできないほど感謝しています」と喜んだ。

 英国漂流郵便局は、久保田さんがロンドン留学中、日本人学芸員から提案されて構想し、今年1月から1カ月ほどロンドン中心街にある日英の交流施設「大和日英基金」で開局した。その後も同施設などに専用のポストを設置し、粟島と同様、今も届け先のない手紙を受け付けている。

 ブライアンさんはかつて郵便局に勤務し、その職歴や人柄にほれ込んだ久保田さんから局長就任の依頼を受けた。久保田さんが帰国する際には、中田さんへのプレゼントとして手作りのステンドグラスを手渡し、「僕は日本に行くと決めたんだ」と誓っていた。

 約束通り22日に粟島を訪れたブライアンさんは、中田さんについて「紳士的で包み込むようなオーラがある。体力にも驚かされる」と称賛し、観光客がはがきを手にする姿を見ながら、「大きいプロジェクトの一員になれてうれしい。漂流郵便局のこのムードは素晴らしい」と涙を浮かべた。中田さんはブライアンさんの印象を「ユーモアたっぷりで、思った通りのすてきな人」と語り、持ち前の笑顔を見せた。

 24日夕には、ブライアンさんの来島を記念し、投函(とうかん)された郵便物の読み聞かせイベントを開催した。粟島とロンドン、2人の局長が朗読する消えない悲しみやかなわぬ願いといった思いに、音楽グループの「表現(Hyogen)」が奏でる音色が共鳴し、集まった人たちは神秘的な雰囲気に酔いしれていた。