「瀬戸内国際芸術祭2016」の秋会期が開幕した8日、日中は青空に恵まれ、アートの島・直島や新たに会場に加わった本島(丸亀市)など中西讃の4島を中心に大勢の若者や家族連れらでにぎわった。高見島(多度津町)や伊吹島(観音寺市)などでは島民らが地元の食を提供。粟島(三豊市)では参加アーティストとのワークショップも開かれ、瀬戸芸ならではの交流の輪が再び広がった。小豆島では、国内外で活躍する和太鼓集団が迫力のパフォーマンスで開幕をアピール。瀬戸内の島々をアートで染め上げる30日間の瀬戸芸終章が始まった。

 「食」が重点テーマの一つの今回の瀬戸芸。春、夏会期に引き続き、秋会期でも食を通じた取り組みが各地で繰り広げられる。高見島ではボランティア団体「さざえ隊」が、郷土食の茶がゆなどをお接待。メンバーの菅原優子さん(67)は「初日からたくさんの人が島に来てくれてうれしい」と笑顔を見せた。

 建築家の野村正人さん(66)=高松市=が古民家を改修した同所の屋外レストラン「海のテラス」では、来場者が瀬戸内海の絶景を眺めながらイタリア料理を堪能。友人と訪れた高松市の柴田ゆきさん(33)は「目の前に海が開けた景色がきれいで感動した。おしゃれな感じもすてき」と目を輝かせた。

 伊吹島で販売された50食限定の弁当「うららの玉手箱」も人気を集め、昼すぎには完売した。兵庫県伊丹市の伊東由紀子さん(27)は「イリコのだしが上品な味わい。穏やかな島で、皆さんの歓迎ムードもうれしかった」とにっこり。

 各島では新作アートにも熱い視線が注がれた。本島の船をかたどった大作「水の下の空」を見た高知県香美市の岡本しのさん(51)は「地面の鏡に木の緑と空が映り、吸い込まれそうな感じがした。時間とともに表面に傷がつけば、違う見え方になるのでは」と感激した様子だった。

 参加アーティストとの交流も瀬戸芸の魅力の一つ。粟島の海底探査船「一昨日(おととい)丸」ではワークショップがあり、作家の日比野克彦さん(58)=岐阜県出身=も乗船して沖へと出航。日比野さんは「海底にはいろいろな歴史が詰まっている。海底でどんな時が流れ、何があるのか。この海の上で想像力を膨らませてみて」とアドバイス。同乗した家族連れらは海底にまつわる物語に思いをはせていた。

 直島の宮浦ギャラリー六区では、義足のアーティスト片山真理さん(29)=群馬県在住=の個展が始まり、テーマ「手」のヒントになった直島女文楽の上演や片山さんのミニコンサートがあった。展示を楽しみにしていたという直島町の田中美智子さん(80)は「体がご不自由なのを隠さずに、美しいアートにしているところに感動した」と話していた。

 9日以降も各島でイベントがめじろ押し。パフォーマンスグループ「MuDA」による新作野外公演(高見島、10日まで)や、音楽プロデューサー小林武史さんが企画したライブ(犬島、11日まで)などが開かれる。