「瀬戸内国際芸術祭2016」秋会期の粟島会場に出展する作品制作に向け、アーティストの日比野克彦さんらが14日、三豊市粟島北の海底から大量のれんがを引き揚げた。れんがは明治時代中ごろ~大正時代に製造され、何らかの事故で沈没した運搬船の遺物とみられる。日比野さんは、れんがを積み上げて造った建築物が日本の近代化を支えたように、芸術や考古学の視点、住民の思いを積み重ねた作品に仕上げることで21世紀に必要な視点を伝える。

 日比野さんは海底から引き揚げた遺物を通じて想像力を膨らませる「瀬戸内海底探査船美術館プロジェクト」を2010年から展開。今回の瀬戸芸の秋会期では、前回からの継続作品の「一昨日(おととい)丸」と「ソコソコ想像所」に加え、引き揚げたれんがを使った構造物を「Re―ing―A」(レインガ)と題して新たに展示する。

 れんが船の沈没跡は13年に粟島の中心から北約4キロの海底で発見し、潜水調査などを行っていた。調査に当たる水中考古学研究所の吉崎伸理事長によると、れんが(縦11センチ、横22センチ、高さ5センチ)は表面にピアノ線で切った痕跡があることやサイズなどから製造年代を特定した。大半に「×」のマークが記されていることなどを手掛かりに製造元や使用目的、搬送経路の解明を進めているという。

 この日は水深約20メートルの海底から作業船で、ケージ(縦、横、高さ各約1メートル)に満載されたれんがを引き揚げた。日比野さんは遠くにあっても見ることができる天体と比べ、近くにあるのに見ることができない海中への探求心は低いとし、「21世紀をつくる上で日常や足元にある海の中を想像するまなざしはとても大切になる」と説明。作品は芸術や考古学などの視点や、さまざまな思いを組み合わせることで「(100年ほど海底で)止まっていたれんがの時間が再び動き出すようにしたい」と話した。