暖かな春分の日となった20日、「瀬戸内国際芸術祭2016」の会場の島々は、開幕を待ちわびた国内外の若者や家族連れらでにぎわった。お目当ての新作アートに刺激を受け、今回の目玉の「食」プロジェクトでは地元の味を堪能。島に暮らす人たちと笑顔を交わした。出展作家の川島猛さんは「自分の作品が島の活性化になれば」と期待を寄せ、三豊市出身の短大生は「地元の新たな一面を知った」と話した。作家に来島者、島民それぞれが心を弾ませる春会期29日間が幕を開けた。

 この日は朝早くから、各航路の切符売り場に長蛇の列。フェリーの中は芸術祭のガイドブックを見ながら行き先を話し合う人たちであふれた。高杉真希さん(48)=川崎市=は「開幕を楽しみにしていた。全島を巡る予定です」と声を弾ませた。

 迎える島は趣向を凝らしてアートファンらを歓迎した。男木島では地元から参加したグループ「TEAM男気(おぎ)」が、島の漁師がかつて行っていた勇壮な「踊り込み」を再現。漁師らと共に、ペイントを施した船に乗り込んでかけ声を上げた。橋本一将さん(28)=岡山県出身=は、前回瀬戸芸にメンバーとして参加したことをきっかけに、島に移住して漁師に。「前回より島の空気や人々を身近に感じながら、踊り込みができた」と満足感を漂わせた。

 今回の新作は各島で注目の的になった。女木島には米・ニューヨーク在住の依田洋一朗さん=高松市出身=の作品「女木島名画座」が登場。依田さんは「僕が生まれた香川の芸術祭に参加できて大変誇りに思う」と感慨深げに語った。豊島を舞台に初参加したスプツニ子!さんは「作品は『縁』がテーマ。何度も島に行くうちに『スプちゃん、スプちゃん』と声を掛けられるようになった。作品も皆さんに愛されてほしい」と期待を寄せた。

 春会期のみの参加となる坂出市沙弥島には県内外から約3500人が押し寄せた。海水浴場の波打ち際にはカラフルな漁網を編んだ「そらあみ〈島巡り〉」を設置。「せっかくなので近くで見なきゃ」と松本絹江さん(31)=東京都=ははだしになって海に入り、「子どものように純粋な気持ちで楽しめる瀬戸芸は素晴らしい」と声を弾ませた。

 初日は終日穏やかな天候に恵まれ、春の島路をのんびり散策する人も。友人と3人で女木島を訪れた長野静子さん(71)=善通寺市=は「瀬戸芸は3回目。フェリーの中で県外の人や若い人と話すのが毎回楽しい。作品鑑賞だけでなく、人と人との会話も魅力です」と目を輝かせた。

知事「島文化堪能して」 サンポート高松で開会式

 香川県高松市のサンポート高松大型テント広場であった開会式には、実行委の構成メンバーや参加作家、会場となる島々の住民ら約500人が出席。実行委会長の浜田知事が開会を宣言すると、メタルテープが天井に向かって打ち上げられるなど、華やかな演出でアートの祭典のオープンを告げた。

 あいさつに立った浜田知事は「その島でしか生み出すことのできないアート作品に触れながら、島の歴史や文化、美しい風景を堪能してほしい」とアピール。総合プロデューサーの福武総一郎さんは「アートがいかに地域を元気にするか、この地から世界に発信したい」と訴えた。

 式では、女木島でプロジェクトを展開する愛知県立芸術大の教授が、この日のために作曲した作品を県吹奏楽連盟の選抜バンドが演奏。さらに、讃岐獅子舞保存会による演舞も披露され、会場を盛り上げた。

 芸術祭には海外からも多くの作家が参加しており、ブラジルの駐日大使やオランダの在大阪・神戸総領事らも来賓として出席した。