来年3月に開幕する「瀬戸内国際芸術祭2016」に向け、現代美術家の大竹伸朗さん(60)=愛媛県宇和島市=が香川県土庄町の豊島で発表する新作に使う木製の船型が11日、展示場所の旧針工場に運び込まれた。

 全長約17メートルの船型は、タイ網漁船を造るための型枠として約30年前に作られたが、一隻も造られずに宇和島市内の造船所に放置されていた。旧針工場は家浦岡地区にあり、幅約12メートル、奥行き約24メートル。昭和の終わりまで約25年間、メリヤス針を製造していた。

 大竹さんは、屋根や壁を取り除いて骨組みだけにした工場に船型を置くことを着想。長年日の目を見なかった船型と工場の歴史や記憶が融合し、芸術祭のテーマである「海の復権」を象徴するインスタレーション(空間芸術)作品になる。

 この日は、船型にくくりつけた綱を地元住民らが引っ張り、家浦港から旧針工場を目指して約800メートルを練り歩いた。お年寄りから園児まで約70人が協力して工場そばに運んだ後、クレーンでつり上げて収めた。

 大竹さんは「船型は母性的なイメージ。宇和島で育った娘が豊島に嫁入りしたような気分」と感慨深げだった。

 今後は船型に照明を取り付けるなどして、芸術祭の開幕までに完成させる。作品は常設展示される。