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第4部 絶望から希望へ(1) デパートの最期(上)運命は決まっていた 
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 二〇〇一年一月二十二日。目覚めたばかりの冬の街は、まだ通勤の姿もまばらだった。午前七時、三栖祥児さん(63)=高松市=は高松地裁にいた。
 コトデンそごうの民事再生法適用を申請するためだった。「あのときの心境は、言葉では言い表せない。誰にも分かってもらえないでしょう」。
 県都の活性化の期待を担い、四国最大級のデパートが船出して三年九カ月。開店の直後から早過ぎる幕引きまで、三栖さんはその一部始終に立ち会った。
 百十四銀行に三十三年勤め、一九九七年一月、県庁支店長に異動した。「もう半年福岡支店にいたら、なかった話なのに。人間の運命的なものかな」。
 コトデンそごうが四月二十三日にオープンする直前、当時の大西潤甫社長に「取締役で来てくれないか」と誘われた。本店営業部の副部長時代、開店プロジェクトの担当だった。
 六月、直談判で三度目の要請を受けた。バブルの時期に作成した計画と開店時の経営環境の落差が分かるだけに、三日三晩悩んだ。「これは大変だぞ」と尻込みする半面、「大変だからやりがいがある」と決心した。
 しかし、実態は覚悟した以上だった。不況に加えて郊外のスーパーの攻勢も響き、売上高は年間三百億円の計画の八割に及ばない。店を開けるだけで毎日五百万円の赤字が出た。
 経理、人事の担当として赤字を減らそうとした。だが家賃の負担を軽くするのは、親会社でビルの大家でもある琴電の意向に沿わない。従業員の削減は、販売面で提携するそごうに「これだけの人数は必要だ。資金の工面をするのが経理の仕事じゃないか」と難色を示された。

コトデンそごう常務だった三栖さん。「瓦町の灯を絶対に守ることが私の役目と考えていた」=高松市常磐町1丁目
コトデンそごう常務だった三栖さん。「瓦町の灯を絶対に守ることが私の役目と考えていた」=高松市常磐町1丁目

 常務とは名ばかり、孤立無援に思えた。巨艦の舵(かじ)はぴくりとも動かない。「片道の燃料しか積まずに出港した戦艦大和のようだった」。
 「運命はあの時点で決まっていた」。そごう本体が民事再生手続きを申請した二〇〇〇年七月十二日だ。「コトデンそごうとしての存続は不可能。だが、形態を変えてでも、何とか事業を継続する道はないか」。融資を受ける銀行とともに打開策を探るが、光明はみえなかった。
 九月にそごう出身の店長が去り、事実上のトップに就いた。「きちんとしまいをしなさいということだな」。銀行側の思惑を感じ取った。「無念」をのみ込み、腹を決めた。
 一部の銀行には自己破産を求める声もあったが、「それでは社員に退職金も出せない。債権者にも余分に迷惑を掛ける」と譲らなかった。
 年末までに民事再生の方針が固まった。年が明け、一週間で申請準備を済ませた。「えっ、お父さん、つぶれるの」。妻にも前日まで秘密だった。
 申請後も多忙を極めた。二月末まで風邪をひいた日を除き、休みは一日だけ。帰宅は連日、深夜のタクシー。体調を崩し、週一回、点滴に通った。
 「心痛心労お察しします。お体には気を付けてください」。社員から自宅に送られた数通のはがきに励まされた。
 社員の大半は開店と同時の採用で、一人前になるには時間不足だった。「でも必死にやってくれた。社員に責任はない」。
 未来のないデパートの後始末を押し付けられる役回り。「瓦町の灯を消さないこと、電車を止めないこと、社員を失業させないこと」。自らに課した三つの使命が支えだった。
 二〇〇一年四月十五日、閉店の日を迎えた。営業終了の午後七時を前に、「ありがとう」と十階から順に店員に声を掛けていく。最後の買い物客を見送るため、正面玄関に立った。
 シャッターが下りる。込み上げる万感の思い。同僚の目には涙が見えた。「そんな顔は見せまい」と歯を食いしばった。深く頭を下げる。店外から温かい拍手が聞こえてきた。

    ◇    ◇
 倒産、難病、子供の死…。人生には降ってわいたような苦難に見舞われ、どん底をさまようことがある。二十一世紀を生きる私たちの幸福のカタチを探るシリーズ「青い鳥さがして」。第四部では、絶望からはい上がり、希望を見いだしていった人々の壮絶な体験と秘めた思いをたどる。

(2004年2月1日四国新聞掲載)

 
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