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マンバのけんちゃん (県内一円) 寒さが旬このぬくもり
作り方
●作り方●(左から)材料はマンバと油揚げ、木綿豆腐、煮干し。塩を入れた熱湯でゆで、冷水にさらす。あく抜きしたマンバを約2センチ幅に切って水気を取る。油を熱したなべで豆腐以外の材料をいためた後、しょうゆ、だし汁を加えて味を整える。水分を切った豆腐を合わせ、ひと煮立ちさせて出来上がり

 鮮やかな緑色のマンバを油でいため始めたとたん、特有のにおいがサッと立ち上がる。味付けをして、仕上げに木綿豆腐を崩しながら入れると、緑の畑に雪が降ったような美しい色合いに仕上がる。

 高松から東讃では「けんちゃん」、西讃では粉雪を散らしたような見た目から「お雪花」と呼ばれ、葉物の野菜が少なくなる冬場の食卓をにぎわせてきた香川の味だ。

 「味もおいしいけれど、あの独特のにおいがほかのお総菜では味わえない」。県生活改善士の横井マツ子さん(65)は、「けんちゃん」の魅力を話す。

 綾南町畑田の横井さん方の周辺では、広い農家の畑から小さな家庭菜園まで、あちらこちらでマンバが青々とした大葉を寒風に負けず広げている。「この辺でマンバを作らない家はないなあ」と横井さん。

 マンバは霜に遭うと葉先が紫色に変色してくる。「二、三度霜に当たると葉が柔らかくなって、けんちゃんにすると一番おいしい。寒の時期が旬なんです」。
素朴な味わいのけんちゃんは、冬から春にかけて讃岐の食卓に欠かせない一品だ=綾南町畑田
素朴な味わいのけんちゃんは、冬から春にかけて讃岐の食卓に欠かせない一品だ=綾南町畑田
 香川の人間にとっては、当たり前のお総菜だが、野菜の品種や料理の発祥はあまり知られていない。

 県農業試験場によると、マンバは九州地方で漬物に使われるタカナの一種。県内で生産されている品種は、カツオナと三池タカナが大半を占める。古くから西日本を中心に広く作られており、「野菜としてはさほど珍しくない」という。

 また「けんちゃん」は、豆腐と野菜を油でいためた精進料理の流れを組む「けんちん」料理が語源。素材と料理方法を切り離して考えるとポピュラーな一品だが、あくの強いマンバを使ってあっさりと「けんちゃん」に仕上げる料理は讃岐独特。県外からの転勤族などにはずいぶん珍しがられる。

 「素材を生かした単純な味付けだからこそ、わが家の味や思い出がある。マンバのけんちゃんを食べると母が台所に立つ姿や祖母が畑で働いていた様子が目に浮かびます」

 こんな県人も多い。一年で最も寒さの厳しい時期に一番うまくなるけんちゃんには、素朴な味わいの中に思い出というぬくもりが閉じ込められている。

 文・靱 哲郎(報道部)  写真・久保 秀樹(写真部)
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